メールマガジンvol. 78【定額残業代の導入方法(2)】

前回のメルマガで,定額残業代の導入が無効とされたリーディングケースとして,ビーダッシュ事件(東京地裁H30.5.30)をご紹介しました。

 

 

ビーダッシュ事件の事案を再度簡単に説明します。

 

 

ある会社が社労士先生と相談をして,今まで年俸制としていた会社の給料体系について,年俸制を止めて,定額残業代制度を導入することにしました。

 

 

社労士先生が全社員について給料のシミュレーションをし,大体,通常残業時間約40時間分,深夜残業時間10時間分で定額残業代を設定すれば,定額残業代以外残業代を支払わなくてもよくなることが分かりました。

 

 

そこで,各社員について,給与の一部を定額残業代に振り分けていきました。

 

 

社員の一人に,月額40万円の社長の右腕的なポジションの管理職がいました。

 

 

この管理職については通常残業時間約40時間分,深夜残業時間10時間分で定額残業代を計算したところ,合計約13万円となり,定額残業代を約13万円としました。この管理職は,定額残業代の分基本給が少なくなり,基本給は約27万円となりました。

 

 

この管理職が退職して,裁判で残業代請求をし,定額残業代は無効で定額残業代制度導入後も残業代が発生すると主張しました。

 

 

裁判所がどのような判断をしたかというと,定額残業代の導入で従業員が不利益を受けるところ従業員に十分な不利益性の説明がされていないとして,定額残業代制度への変更を無効としました。

 

 

結果,定額残業代制度の導入以降も残業代は発生し続けるとして,約570万円を会社は支払うことになりました。

 

 

このケースからも分かるとおり,定額残業代制度を有効に導入するには就業規則や雇用契約書を変えるだけでは足りず,労働者に定額残業代制度の不利益性を十分に説明する必要があります。

 

 

では,従業員にどのような方法で定額残業代制度の不利益性を説明すれば良いでしょうか?

 

 

 

従業員を集めて説明会を開くという方法があります。

 

 

この方法では,従業員から質疑がたくさん出され説明会が紛糾するリスクがありますので,個人的にはお勧めできません。

 

 

その他に,従業員一人一人に説明をするという方法も考えられます。

 

 

しかし,この方法は規模の大きい会社では時間がかかり過ぎるという問題があります。

 

 

そこで,私がお勧めするのは,書面での説明です。

 

 

書面で,定額残業代制度を導入することになったこと,その導入によると基本給の一部が残業代となるので基本給が減りかつ残業代も既払いとなるものの,会社が従前現実に交付していた給料と導入後に交付する給料には差がないことを説明します。

 

 

このような内容の書面で定額残業代制度を導入する理由を説明して,この書面に同意をもらえれば,きちんと労働者に定額残業代制度導入の不利益性を説明したものとして,導入する定額残業代は有効となると思います。

 

 

定額残業代制度の導入をお考えの方は,当事務所で説明書類の作成や就業規則の変更等もさせていただきますので,ご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 


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