あっせんの書類が届いた
○紛争調整委員会によるあっせん制度
都道府県の労働局では,紛争を解決するための制度として,紛争調整委員会による「あっせん」(以下,単に「あっせん」と言っていきます。)。という制度を設けています。
会社経営をしていると,ある日突然,労働局からあっせんの通知が送られてくることがあります。
社労士先生によっては顧問先,関与先企業様から「あっせんの通知が送られてきたがどうすればよいか」と相談を受けることがあるかもしれません。
私は,自身が企業様の代理人となってあっせんの手続に参加したことが過去10件近くあります。その際は,群馬,栃木,埼玉,東京等色々な労働局や労働監督署に行きました。
また,お付き合いのある社労士先生や企業様から相談を受け,あっせんの手続についてアドバイスし,私が代理人とならずに解決に至ったこともあります。
労働局からあっせんの通知が送られてきた場合にどうすればよいかを説明いたします。
○あっせんが利用される場合
労働局によるあっせんは,労働者からの様々な請求で使われています。
具体的には,退職金請求,残業代請求,不当解雇に基づく慰謝料請求などです。
近年ではハラスメントを受けたので慰謝料を求めるという類型が増えているように思います。少し古い統計ですが,2017年は,全国で5021件のあっせんの申請があり,内訳は解雇,雇止め,退職勧奨が38%,いじめ,嫌がらせが20%,労働条件引下げが10%でした。
これらの請求は弁護士に依頼して裁判をしたり労働審判をしたり等ももちろんできます。
ですが,弁護士に頼むお金がないとか弁護士に頼むほどの高額な金銭請求ではないという時にあっせんが使われているようです。
請求額としては50万円から100万円くらいというのが経験的には多いです。
○あっせんの流れ
労働者が労働局にあっせんの申請をすると(申請は書面でします),労働局から企業様に「あっせんの申請がされた。あっせんに参加するかどうか意向を教えてもらいたい。」という通知が来ます。
この通知がくると企業様はあっせんに参加するかどうか選んで回答することになります。
よく「あっせんに参加したほうがいいですか。」という質問を企業様から受けますが,「参加したほうが良いです。」とご回答しています。
あっせんを不参加とすると,その事案は当然解決しません。そうすると労働者がその次にどうするかというと,今度は弁護士に相談して裁判を起こしてくるということもあり得ます。
裁判となると,労働者としても弁護士費用がかかりますから,そうたやすくは和解に応じてくれずあっせんで解決するより解決額が高くなる傾向があります。
つまり,あっせんの方がその案件を安い和解金で解決できることが多いのです。
労働局にあっせんに参加すると回答すると,企業様側の都合も踏まえあっせんの期日が決められます。
あっせんの期日は,労働局や労働基準監督署などで行われます。期日では労働局が選任した紛争調整委員という方(弁護士や大学教授が選任されています。)が双方の言い分を聞きます。言い分を聞く際は,双方当事者が鉢合わせしないよう双方当事者はそれぞれ別の部屋に待機して順番に呼ばれます。
紛争調整委員が双方の話を聞いた後,その事案ごとに「このくらいの解決金で解決しませんか」という促しがあります。企業様サイドの場合,大抵〇十万円などいくらか支払うという促しがされます。
双方がその促しに応じれば和解ということになります。和解する場合,書面を作り,双方の署名記名押印がされます。企業様サイドとしては1カ月以内に○○円を支払う。その他には何の債権債務もない(何ら権利関係はない)という内容の書面になります。
他方,促しに応じなければ,紛争調整委員があっせん案というものを出します。
こちらはイメージとしては裁判所の判決に近いです。労働者側も企業様側もこのあっせん案に拘束されるわけではありません。あっせん案を受け入れる場合は和解がされます。
和解の内容は,上記と同じく企業様サイドとしては1カ月以内に○○円を支払う。その他には何の債権債務もない(何ら権利関係はない)というものとなります。
あっせん案を受け入れない場合,あっせんの手続は終了となります。
○あっせんの特徴
労働局のあっせんの特徴は期日が1回限りだということです。裁判所での話し合いの手続(調停と言います。)は期日が2回,3回と行われることがありますが,あっせんの手続には2回目はありません。期日が1回しかないという心理的効果があるからなのかあっせんは和解に至りやすいです。
私の経験ではあっせんで和解が成立する確率は90%以上です。
あっせんの手続は,迅速かつ比較的労働者への支払い額を抑えた内容で和解ができますので,実は企業側にも大きなメリットがあると思っています。
○弊事務所にご相談ください
弊所では今まで様々な事件をあっせんの手続で解決してきています。
あっせんについてご相談されたい社労士先生や企業様はどうぞお気軽にお問い合わせください。