その他の承継問題

役員・従業員への承継について

 

従業員等への承継では、①借入金の連帯保証の解除、②次期社長の連帯保証の引き継ぎ、③オーナー株式の買い取り、が問題となります。

 

 

①借入金の連帯保証の解除

 

多くの中小企業では、金融機関への借入があります。

 

この借入金はオーナーが連帯保証をしています。

 

オーナーとしては、従業員へ事業を承継する場合、この連帯保証を解除してもらいたいと考えます。

 

ただ、これは社長を代わるからといって、当然に解除してもらえるものではありません。

 

解除してくれるかどうかは、銀行が解除に応じるかにかかってきます。

 

社長が資産家のような場合には解除してくれないこともありえるでしょう。

 

 

②次期社長の連帯保証の引き継ぎ

 

金融機関が、先代の社長の連帯保証を解除してくれるとしても、金融機関は当然、次期社長に連帯保証を引き継がせようとします。

 

 

 

金融機関は、次期社長が連帯保証を引き継がないのであれば、通常、先代社長の連帯保証は解除してくれないため、①と②はセットで問題となります。

 

事業を引き継ぐ従業員は、先代の社長の保証を引き継ぐ覚悟が必要になってきます。

 

従業員は、いわゆるサラリーマンです。

 

今までサラリーマンだった従業員が、突然、会社の債務の連帯保証をすることになります。

 

何千万円とか場合によっては億単位の保証をすることもあるわけで、これは従業員にとって大変な環境の変化といえます。

 

 

事業を引き継ぐ従業員としては、そこまでリスクは取れないと躊躇してしまう場合も多いでしょう。

 

なお、次期社長となる従業員が連帯保証を引き継がない場合は、先代の連帯保証は解除されないことが多いです。

 

先代の連帯保証が解除されず、次期社長が連帯保証を引き継がないパターンの事業承継もあり得ます。

 

この場合、次期社長はサラリーマン社長ということになります。

 

多くの大企業と同じ形態ですね。

 

サラリーマン社長なので、③の次期社長の株式の買い取りもないということなります。

 

 

この場合、次期社長は連帯保証を引き継がず、株も持たないで、会社の経営にあたることになります。

 

 

③オーナー株式の買い取り

 

次期社長が先代の社長の株式をいくらで買い取るかという問題です。

 

株式の算定は、顧問税理士さんにやってもらいます。

 

次期社長に株式を移転しておかないと、先代の社長が他界した後、会社を継がなかった子などが会社の株式を相続することになります。

 

この場合、先代社長の相続人と新社長との間で会社の支配や株式の買い取りをめぐって争いが起こり得ます。

 

 

このような争いが起きないように、従業員が会社を継ぐ場合、必ず株式の買い取りを行うべきだと思います。

 

子が会社を継ぐ場合には、先代が亡くなると、株式の買い取りをしなくても子が株式を相続できますが、従業員が会社を継ぐ場合には、先代が亡くなっても従業員は株式を相続できないので、この点は注意が必要です。

 

 

ちなみに、いくらで買い取るかという問題の他に、従業員がどのようにして株式を買い取る資金を用意するかという問題もあります。

 

従業員が金融機関から借入をする場合もあるでしょうし、場合によっては税理士が算定した株式の時価より安く株式を譲ることも考えなければならないかもしれません。

 

子が後継者となってくれなくて、どうしても会社を従業員に引き継がせなければならない場合には、株式を時価より安く譲ることも検討せざるを得ないと思います。

 

 

第三者への承継(M&A)

 

後継者がおらず、事業承継をする場合、事業を売却することが考えられます。

 

事業を売ったり買ったりする場合、弁護士に法的アシスタントを頼むのが無難です。

 

 

大企業がM&A(事業の売却などです)をする場合、買主側の当事者に弁護士がついて、売主の会社の事業内容を細かくチェックします。

 

これをデューディリジェンス(due diligence)と呼びます。

 

なぜ弁護士がチェックするかというと、売主の会社に思わぬ法的な問題があったら、買主が売買後に不利益を受けるからです。

 

例えば、労働契約に問題があり、事業を買ったら買収後莫大な残業代請求をされたら大変ですが、このような問題がないかを弁護士がチェックします。

 

売主側の場合でも、相手がしっかりお金を払ってくれる企業かを弁護士に調べてもらいます。

 

 

ところで、M&Aのリスクは大企業よりも中小企業の方が大きいと言えます。

 

大企業の場合、法令を順守しておかないと、後で社会問題になって企業イメージが低下し、経営に打撃を受けるので、法令を順守する動機があります。

 

しかし、中小企業の場合はこのような動機がないので、法令順守が甘くなりがちです。

 

よって、買収などをする場合のリスクは中小企業の方が大企業より高いです。

 

 

また、以下で説明するように、M&Aは、①機密保持契約→②基本合意→③デューディリジェンス→④双方の会社の株主総会等の手続→⑤契約の履行、という経過を辿ります。

 

これらは契約などの法律の問題が関わってきます。

 

ですから、M&Aを使った事業承継をする場合(事業を譲り受ける場合も含め)には、弁護士に法的アシスタントをしてもらうことをお勧めします。

 

当事務所では,M&Aの法的アシスタントは、100万円を基準とし、事業規模に応じて額を増減して請け負っています。

 

 

М&Aの一連の手続

①機密保持契約

M&Aの検討をしていることを、会社の従業員も含め第三者に開示しないことを双方で約束します。

 

検討段階で社員に漏れたり取引先に漏れたりすると、無用な動揺が生じるからです。

 

 

②基本合意 

いくらで、どのような条件で事業を売買するか交渉し、条件を契約書に落とし込みます。

 

 

③デューディリジェンス 

お互いの会社の状況を調べます。

 

 

④双方の会社の株主総会等の手続 

合併などをする場合、株主総会の特別決議や取締役会の承認等が必要になります。 

 

また、債権者に合併などをすることを通知することなども必要になります。

 

 

⑤契約の履行 

②の基本合意に則って、売主は事業を引き渡し、買主は代金を払います。

 

 


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