同一労働同一賃金についてー7

 

◎同一労働同一賃金について今後実践いただきたいこと◎

 

 

 

労働事件は、ここ20年で3倍以上となっており、事件数が大幅に増えています。

 

労働事件の中でも特に高額の残業代請求がされることが多いのですが、残業代請求は残業代の計算などが大変で請求のハードルが高く、提訴のハードルはさらに上がります。

 

他方で、同一労働同一賃金違反は手当の格差の計算だけなので、請求も提訴も残業代請求に比べると容易に行うことが可能です。

 

つまり、労働者側からすると紛争化させやすいといえます。

 

 

現在起きている訴訟は大企業が中心ですが、今後は、中小企業においても紛争化することが予想されます。

 

例えば、退職問題で揉めた外国人労働者がユニオンに駆け込み、ユニオンから請求されたり、雇止めした非正規職員が弁護士に相談に行き、弁護士から雇止めの無効と同一労働同一賃金違反の損害賠償を求められたり、といったことが考えられます。

 

ユニオンが相手の場合、大手の企業との取引があるような中小企業ですと、得意先の大手企業でビラまき等をされるなどして得意先を失う可能性もあります。

 

 

 

同一労働同一賃金の現在の裁判例の動向をみると、ボーナスや退職金は一応企業側が勝訴しているので、格差是正をする優先順位としては、手当より低いといえます。

 

 

定年後再雇用の契約社員も、現状は、精勤手当等以外は格差を許容してもらえる可能性が高いと考えられるでしょう。

 

 

一方で、手当は、企業側が負けているものが多いです。

 

正社員と非正規社員の仕事内容がほぼ同一の場合、手当訴訟で会社側が勝てるのは、

 

・更新期間が短い(5年未満など)契約社員やアルバイトへ支払っていない場合

 

  又は、

 

・契約期間が5年を超えてきた場合では役職手当と住宅手当(住宅手当は正社員が転勤あり契約社員 転勤なしの場合)を支払っていない場合

 

くらいではないかと思われます。

 

 

 

以上を踏まえ、同一労働同一賃金に関する紛争が起きないよう、経営者様に取り組んでいただきたいのは

 

①賃金、特に手当の見直し

 

 

②就業規則の変更

 

です。

 

 

②についてはすぐに着手できますので、一日も早く取り組んでいただきたいところです。

 

金銭的な余力がある企業様であれば、②に取り組みつつ、非正規社員に手当を少しずつ支払っていくように賃金そのものを変更してくのが望ましいです。

 

 

また、契約社員やパートタイマー用の就業規則を作成することも必須です。というのも、契約社員やパートタイマー用の規定がないと、これら非正規社員に対しても正規社員の就業規則が適用される可能性があるからです。

 

 

 

では、具体的にどのように手当を見直していけばいいでしょうか。

 

 

まず、最初に着手するのは手当の差異の是正です。

 

手当に差異があると違法とされやすいので、正社員と非正規社員の間に仕事内容の差がない場合には、この格差を是正していく必要があります。

 

手当の見直し方には、例えば作業手当について正社員1万円は維持するが、契約社員にも5000円を支払うなど、同じ条件にはできなくても、正社員と契約社員の手当の支給額を現状より差がなくなるよう努力をする、という手法が考えられます。

 

とはいえいきなり契約社員5000円支払うというのも難しいでしょうから、1年目は500円、2年目は1000円、というように徐々に増やしていくということでもよろしいかと思います。

 

 

また、今まで紹介してきた裁判例からもわかるように、手当は違法に差別をしているといわれやすい傾向がありますから、役付手当や精勤手当など、どうしても必要な手当以外は思い切って廃止してしまうのもひとつの方法と考えます。

 

この点、有期雇用者の通勤費は5000円、正社員は1万円であったところ、正社員の通勤費を5000円に減額し、基本給を1万円増額した事例で、同増減額後は通勤費について正社員と有期雇用者で格差はないとされた裁判例もあります(丸水運輸商事事件 福岡高裁平成30年9月20日)。

 

ただ、このような変更の場合、通勤費については就業規則の不利益変更の問題が生じるので、労働者の個別同意が必要となります。

 

 

 


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