その他退職勧奨の問題点

 

 

 

 

目次

1 退職勧奨が解雇とされる事例

2 退職勧奨が精神疾患による労災とされる事例

 

 

 

(1) 退職勧奨が解雇とされる事例

 

 

 

使用者が「解雇」とは言っていないものの、社員が行き場をなくしてしまい、事実上社員が出社できなくなってしまう事例があります。

 

退職届が出ていないと、「解雇」という言葉を使わなかったとしても、実質的に解雇されたとして裁判を起こされる可能性があります。

 

会社が解雇ではなく退職のつもりでいても裁判所により実質的には解雇がされたと認定される事例が散見されますので注意が必要です!

 

 

 

事例

北関東のレストランチェーン店のマネージャーが依頼者

先代社長には可愛がられていた

社長が代わり、新経営陣からは先代の太鼓持ちのように言われ、冷遇された

マネージャーが最後にいた店舗の閉鎖に伴い、役員から電話で「あんたの居場所はもうない」と通告された

マネージャーはその店舗の閉鎖後、行き場をなくして、当事務所の相談に来た

 

 

この事例では、依頼者は会社に居場所がなくなっているので、出社できない状態になっていました。

 

合意退職となったのか、あるいは解雇されたのか、書面がなく明確ではありません。

 

依頼者自身も、自分が退職なのか解雇なのか理解されていませんでした。

 

 

本件では、退職より解雇という構成の方が労働者に有利であるため、解雇という構成にし、解雇無効の裁判を起こすことをすぐに決めました。

 

ただ、解雇されたという証拠がありませんので、まず、解雇されたという証拠が欲しいと考えました。

 

 

そこで、依頼者に会社から解雇理由証明書をもらってください、とお話しました。

 

会社は当初、「解雇していないので解雇理由証明書は出せない」と言っていたのですが、「新しいところに就職するつもりなので解雇の証明書がほしい」と言ってもらったところ、会社は解雇理由証明書を出してきました。

 

そこで、当方からすぐに解雇無効の裁判を起こしました。

 

会社は、裁判の中で、有効な整理解雇であると主張してきましたが、裁判所は解雇無効を認定してくれました。

この件では、会社側としては解雇理由証明書を出すのではなく、退職勧奨により合意退職になったと主張すべきだったと思います。私が会社側の代理人弁護士であればそのように主張します。

 

解雇していないという認識であれば、労働者から求められても安易に解雇理由証明書を出さず、あくまでも合意退職であることを主張しなくてはなりませんこの事例では、会社は合意退職を裏付ける証拠(書面)を持っていなかったので、労働者側が「合意退職ではない、解雇された。」と言ってきたら、会社側としては諦めて社員を復職させる(少なくとも、復職の用意があることを主張する)べきだったと言えます。

 

本事例のように、労働者から「解雇と言われていないが実際には解雇された。」等と主張されるようなことがないように、退職勧奨をしたら退職届(+会社の承諾書)または 退職合意書を絶対に取得するようにしましょう。

 

 

退職勧奨による合意退職という前提をとっているなら、絶対に解雇通知や解雇理由証明書は出してはいけません。

 

労働者の中には、解雇は無効になりやすい、解雇が無効になると会社から金銭を取れる、ということを知っていて(インターネットで調べればすぐにわかります)「解雇して欲しい。」等という人もいるからです。

 

 

なお、雇用保険の関係で会社都合の退職としてもらいたいがために「解雇にして欲しい。」という労働者も少数ながらいるので、退職勧奨による退職でも会社都合の退職となることを説明しましょう。

 

 

 

 

 

(2) 退職勧奨が精神疾患による労災とされる事例

 

 

 

①退職の意思がないことを表明しているにもかかわらず、執拗に退職を求められた

②恐怖感を抱かせる方法で退職勧奨がされた

 

 

この2つのうちどちらかの事実があり、その後6か月以内に精神障害が発症した場合、精神障害が労災となる可能性があります。

 

怖いのは、退職勧奨後、精神障害により休職となり、退職届も提出されず、労災とされることです。

 

このような場合、会社は働けない期間の休業損害(労災から支給される額の不足分)+通院していた期間の慰謝料を支払う義務を負います。

 

労災ならば、2~3年など長期に及ぶことがあります。

 

 

従いまして、退職の意思がないことの表明があるのに執拗に退職を求めたり、恐怖感を抱かせる方法で退職勧奨をするのは絶対やめましょう。

 

 

 

 

 

 

 

★このように、退職勧奨には欠いてはいけない必須のステップがあります。

退職勧奨を円滑に進めたい企業様、社労士先生は、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

 

 

 


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