部長職の管理監督者性が認められた事例-ネクスコン・ジャパン事件-大阪地判令和3年3月12日判決

 

 

事案の概要

 被告会社はデジタル端末機用バッテリー保護回路などの製造を営む会社です。

 原告Xは同社の営業管理部の部長職で管理監督者とされていました。

 

 被告会社では、社員に対しS1ないしS4、M1、M2という階級を付与しており、M等級以上は管理職としていました。原告XはM2という階級にあり、この階級は、被告会社代表者と同じ階級でした。

 

 また、被告会社では部長職にあったのは原告Xを含め2名であり、原告Xよりも上位の職にあったのは被告会社代表者らの取締役のみでした。

 

 しかし、原告Xは退職後、自身は管理監督者にあたらないとして未払残業代の支払いを求めて被告会社を提訴しました。

 

 管理監督者にあたるかは、

 ① 経営に関与していたか(どの程度の権限があったか)、

 ② 労働時間に関する裁量、

 ③ 待遇、

の3要素の総合考慮で判断するのが裁判例の大勢です。

 

 裁判所は、以下のように①から③のいずれも会社有利に認定しました。

 

 まず①(経営に関与していたか)は、原告Xが被告会社において取締役に次ぐ高位の地位にあったことや、原告Xが取締役に事業計画を立案したりリストラを中心的に進めたりしていたことから経営に関与していたと認定しました。

 

 次に②(労働時間に関する裁量)も、原告Xはいつどのように働くか自由に決められたとして労働時間に関する裁量もありと認定されています。

 

 最後に③(待遇)は、原告Xは年収が798万2940円であった一方、被告会社の管理職でない従業員で一番年収が高い者が約657万円、被告会社の代表者の年収が約798万円であり、原告Xは一般職の従業員と比較して好待遇であったと認定されました。

 

弁護士の視点

 これらの結果、原告Xは裁判所から管理監督者であったと判断され、被告会社に対する未払残業代の請求は棄却されています。会社が管理監督者制で勝った珍しい案件です。

 

 本件では管理監督者と一般職とを線引きする①から③のいずれの要素でも会社に有利な事実関係が多くあり、裁判所の認定はまずまず妥当なものかと思います。

 

 


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