懲戒処分を駆使して問題社員対策を図る-1
懲戒解雇以外の懲戒処分は、会社の労務管理の「伝家の宝刀」ともいえるものですが、適切に利用されておらず宝の持ち腐れとなっているのが現状です。
本コラムでは、解雇以外の懲戒権行使のアドバイスにより人事紛争を解決していくための方法について解説していきます。
厚生労働省が公表している個別労働紛争解決制度施行状況を見ると、解雇や退職勧奨、自己都合退職の相談が15年前と比べて約27%も増加しています。
つまり、問題社員対応で悩んでいる会社は依然として多く、誰かに相談したいという潜在的なニーズがあります。
次に、問題社員の類型について見ていきます。
【問題社員の類型】
①単発的問題行動型
酔っての暴行など
②恒常的問題行動型
軽度のセクハラ・パワハラ、協調性に難がある、上司の命令に口答え、パフォーマンスが異様に低い、営業中にさぼるなど
③違法行為型
横領、重度のセクハラ・パワハラ、しらふで暴行など
★①→②→③の順に解雇しやすくなる
ここで、企業が特に悩んでいるのは、恒常的問題行動型の問題社員です。
経営者の方々の中には、こういった問題社員への対応に思い悩んだ結果、いきなり解雇をしようとする方がいます。
しかし、違法行為型ならともかく、恒常的問題行動型でいきなり解雇するのは妥当でなく、懲戒処分等のステップを踏むべきということは、問題社員対応5【極意2:懲戒処分】でお伝えしたとおりです。
懲戒処分は問題社員対応で非常に効果的なのですが、懲戒処分(特にけん責と出勤停止)という伝家の宝刀を利用していない会社が実に多いです。これはおそらく、懲戒処分を知らない、効果があるかわからないなどの理由によるのではないかと思われます。
法律事務所であっても、職員の問題行動に対し懲戒処分を利用しているという話をあまり聞きません。
大げさに聞こえるかもしれませんが、懲戒権を利用せずして問題社員対策や企業の秩序維持はできないといっても過言ではありません。
例えば、刑法では、死刑だけでなく、無期懲役刑、有期懲役刑、禁固刑、罰金などがあります。
同様に、懲戒処分でも、懲戒解雇だけでなく、諭旨解雇、出勤停止、源空、けん責、戒告など、さまざまな処分があります。
これらの処分を駆使して企業秩序を図っていく必要があります。
企業秩序維持に非常に役立つ懲戒処分ですが、懲戒処分は、重すぎるなど相当でない場合には無効となります。
根拠は労働契約法第15条にあります。
(労働契約法第15条)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。
懲戒処分が事案に比して重い等の場合、この条文により、懲戒処分が無効となってしまいます。
懲戒処分が無効とされることのないように、「懲戒処分の落とし穴」を知る必要があります。
次回のコラムでは、懲戒処分の落とし穴について解説していきます。
問題社員対応にお悩みの企業様は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。