同一労働同一賃金についてー2

同一労働同一賃金を考えるにあたって重要なことは、最高裁判決も働き方改革関連法も、正社員と、契約社員やフルタイマーなどの非正規雇用の社員との間の賃金の格差を問題にしている、という点です。

正社員と正社員、契約社員と契約社員、パートタイマーとパートタイマー同士の間の待遇の格差は問題にはなりません。

職務内容と責任が同じような正社員と非正規雇用労働者との間で待遇の格差があることが問題なのです。


前回のコラムでも述べたとおり、同一労働同一賃金とは、「職務内容と責任が全く同じである正社員と契約社員がいるとき、待遇で不合理な差別をしてはならない」というものです。


ここでいう待遇とは、まずは手当のことです。

例えば、休まずに勤務した場合に支払われる「皆勤手当」について、正社員と契約社員で「皆勤手当」に差を設けるのは、普通、合理的な理由は見出せません。

ですので、「皆勤手当」を支払わないのは待遇で差別しているとされ、違法だと判断されてしまいます。待遇の差が違法でないかどうかを検討するには、手当ごとに差を設けることが違法でないかどうかを判断する必要があるのです。

基本給が同じ20万円である正社員と契約社員がいるとします。正社員には家族手当を2万円支給しているのに対し、契約社員には家族手当の支給をしていない場合、支給の総額は正社員24万円、契約社員22万円です。

総額でみれば大きな差はありませんが、家族手当が契約社員には支払われていないのは違法とされる可能性があります。


このように正社員と契約社員との支給総額が大きく変わらないからと言っても安心はできないと言えます。


正社員と非正規雇用労働者の待遇の格差を禁止しているのは、パートタイム・有期雇用労働法(※正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と言います。)の第8条です。

条文は以下のとおりです。


(パートタイム・有期雇用労働法第8条)

事業主は,その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給,賞与その他の待遇のそれぞれについて,当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において,当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下,「職務の内容」という。),当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち,当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して,不合理と認められる相違を設けてはならない。



この条文に違反していないかどうかを検討するのに当たっては2つの視点から考えるとよいと思います。

1つ目の視点は、待遇の性質や目的が非正規雇用労働者にも当てはまるかどうか、という視点です。

2つ目の視点は、仕事の内容や仕事の責任の程度が同じであるかや、仕事の内容や配置の変更が同じかどうか、また、その他の事情があるかどうか、という視点です。待遇の性質や目的が非正規雇用労働者には当てはまらないのであれば、待遇の格差があっても違法とはなりにくいです。


待遇の性質や目的が非正規雇用労働者にも当てはまる場合であっても、仕事の内容や責任の程度が違うのであれば、待遇の格差があっても違法とはなりにくいです。


待遇の性質や目的が非正規雇用労働者にも当てはまり、かつ、仕事の内容や責任の程度が同じであっても、仕事の内容や配置の変更が異なれば、待遇の格差があっても違法とはなりにくいです。


待遇の性質や目的が非正規雇用労働者にも当てはまり、かつ、仕事の内容や責任の程度が同じで、仕事の内容や配置の変更も同じであるとすると、待遇の格差は違法となりやすいと言えます。


ただし、待遇の性質や目的が非正規雇用労働者にも当てはまり、かつ、仕事の内容や責任の程度が同じで、仕事の内容や配置の変更も同じであっても、例えば、正社員登用制度があったり、定年後再雇用制度があったりするなど、その他、格差を設けることが合理的であるといえるような事情があれば、違法とはなりにくいです。



次回は、最高裁判例を具体的に解説していきながら、更に同一労働同一賃金について考えていきたいと思います。



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