同一労働同一賃金についてー6

 

 

同一労働同一賃金の問題を考えるにあたって、平成30年にも2件の重要な最高裁の判決が出ています。

 

1つはハマキョウレックス事件、もう一つは長澤運輸事件と呼ばれるものです。

ハマキョウレックス事件も長澤運輸事件も、被告(会社)はどちらも運送業です。

 

正社員には支給されている手当などが、ハマキョウレックス事件については契約社員に、長澤運輸事件については定年退職後の期間雇用者に支払われておらず、この不支給について損害賠償請求がされ、一部認められたというものです。

 

 

【ハマキョウレックス事件】

会社は、貨物運送業です。

正社員は662人、臨時雇用が3935人いました。

裁判を起こした労働者は、契約社員のトラックドライバーでした。

 

 

ハマキョウレックス事件において、最高裁は、住宅手当について正社員と契約社員との間で差異があることが不合理とはいえないとしました。

 

ハマキョウレックス社では、住宅手当が正社員は21歳以下2000円、22歳以上2万円とされていた一方、契約社員には支給しないという規定となっていました。

 

この点、正社員は転勤が予定され、住宅費用が多額になりうることから、契約社員との間で差異があっても不合理ではないという判断がされました。

 

 

他方で、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当についてはいずれも不合理であるとされました。

 

ここで、ハマキョウレックス社には3935名の非正規社員がおりました。

 

大阪高裁では原告1人について77万円の請求が認められています。

 

また、大阪高裁では差異が認められていた皆勤手当も最高裁では不合理とされています。

 

皆勤手当の額は月額1万円でしたので、3年前までさかのぼって1万円×36か月=36万円が認められたことになります。

 

そうなると、非正規社員1人につき、77万円+36万円=113万円が認められることになりえるのです。

 

非正規社員1人について113万円ですから、3935名全員について是正するとなると、3935名×113万円=44億4655万円ものコストがかかることになります。

このように、手当を多く採用している会社は大きなリスクを抱えているとも言いえます。

 


【長澤運輸事件】

訴えを起こした労働者は、バラセメントタンク車の乗務員として勤務し満60歳で定年退職した後、改めて会社との間で有期の労働契約を締結し嘱託社員として勤務していました。

 

正社員の給与は、

ア)基本給

イ)能率給(乗務員の月額稼働額で変動)

ウ)職務給(職種による)

エ)精勤手当(月額5、000円)

オ)無事故手当(月額5、000円)

カ)住宅手当(月額1万円)

キ)家族手当

ク)役付手当

ケ)時間外手当

コ)通勤手当

サ)賞与

シ)退職金

で構成されていました。

 

 

 

 

最高裁は、精勤手当と超過手当について正社員と契約社員との間で差異があるのは不合理であるとした一方、基本給や住宅手当、家族手当、役付手当、賞与の支給がないことについては不合理ではないと判断しました。

 

ハマキョウレックス事件と長澤運輸事件は、どちらの事件も正社員と契約社員の格差を問題にした事件であるにもかかわらず、長澤運輸事件はハマキョウレックス事件と比べると会社側に有利な判断がされています。

 

 

この差が出たのはなぜでしょうか。

 

この差は、ハマキョウレックス事件では同じ年代の正社員と契約社員の格差を問題にしているのに対し、長澤運輸事件では正社員と定年後再雇用者との格差を問題にしているという点にあります。

 

 

では、定年後再雇用者の方が会社側に有利な判決となったのはなぜでしょうか。

 

長澤運輸事件では、訴えを起こした労働者は、定年退職するまでの間、無期契約労働者として賃金の支給を受けてきました。また、要件を満たせば、老齢厚生年金の支給を受けることも予定されていました。

 

さらに大きいのは、長澤運輸では労働組合と団体交渉をした上で賃金が決められていたという点です。

 

定年後再雇用であることと、労働組合と団体交渉をしたことについて「その他の事情」があるとされ、正社員と契約社員との間の際は不合理ではないとされたのです。

 

 

 

ここで、定年後再雇用者の給与は何パーセント程度まで減額して大丈夫か、ということを見ていきたいと思います。

 

長澤運輸事件では、定年後再雇用者の給与の減額率は20パーセント程度でした。

 

定年前の30パーセントから40パーセントの減額を適法とした裁判例(学究社事件 東京地裁立川支部 平成30年1月29日)がある一方、定年前は事務職をしていた社員を定年後清掃業務に就かせようとして違法と判断され、1年分の賃金見込額の慰謝料請求が認められた事件(トヨタ自動車ほか事件 名古屋高裁 平成28年9月28日)や、労働者の希望とは異なる大幅な労働時間・賃金減少の提案(労働時間45パーセント減、賃金75パーセント減)について違法と判断され、慰謝料100万円が認められた事例(九州惣菜事件 福岡高裁 平成29年9月7日)があります。

 

独立行政法人 労働政策研究・研修機構より平成26年5月30日に発表された「高年齢社員や有期契約社員の法改正後の活用状況に関する調査」によると、再雇用の場合の賃金の平均値は再雇用前の68.3パーセントでした。また、大企業の方が減額率が高い傾向がみられました。

 

 


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