同一労働同一賃金について-8

 

正社員と契約社員の格差をいきなりなくすことは難しい企業が多いと思われます。

なので、就業規則を変更し、以下のフローチャートでどこかで「格差OK」の方向に持っていけるようにするとリスクを低減できるといえるでしょう。

 

 

 

 

最高裁判決では、待遇(手当の他、賞与、退職金)の目的がどのようなものであるかが重要でした。

 

待遇の目的が「福利厚生」と裁判所に判断されると、非正規社員にもその目的が当てはまるとされやすいです。

 

他方で、待遇の目的が「正社員の確保」と裁判所に判断されると、非正規社員にはその趣旨は当てはまらないとされやすいです。

 

そこで、待遇の目的を「正社員の確保」と就業規則で変更しておくといいでしょう。

 

なお、学者の見解では、待遇の目的は、どのように就業規則に定められているかではなく、それぞれの待遇の実態を踏まえて客観的に判断するべき、とされています。

 

それでも、就業規則に待遇の目的を規定しておくのは後々のことを考えると意味があると思われます。

 

 

 


【正社員と契約社員では仕事の内容や責任に差があると言えるためにやっておくべきこと】

 

正社員と契約社員では仕事の内容や責任に差があると言えるためにやっておくべきこととして考えられるのは次のとおりです。

 

 

 

①就業規則で、正社員の責任について言及する

 

(就業規則の例)
第○条
「正社員は、当社のみならずグループ企業全体の発展、企業活動を通じた社会的責任の遂行、人材開発、部下の指導育成、生産効率、品質の目標値、品質改善に責任を持つ」

 

 

 

②就業規則で、正社員と契約社員には「上下関係がある」と規定する 

 

(就業規則の例)
第○条
「契約社員は、正社員の指示のもと、雇用契約に記載された事業所で、正社員の補助業務に従事する」

 

 

 

③正社員には「残業を命令できる」という就業規則にする
この点は、おそらくすでに就業規則上、社員の同意がなくても残業をさせられるとことになっているかと思います。
さらに、以下のような条文を加えて正社員は残業命令を断れないが契約社員等は断れる体制にするとよいでしょう。

 

(就業規則の例)
第○条
「契約社員、フルタイマー、パートタイマーは、残業命令はしない、同意があれば残業を頼める」

 

 

 

【仕事の内容の変更や配置の変更が違うと言うための方法】

 

仕事の内容の変更や配置の変更が違うと言うための方法としては、正社員には「昇進、降格、転勤、出向、職務変更」を命じることがあるが、契約社員にはこれらを命じることがない(若しくは命じても限定的である)ことを就業規則でうたっておくとよいでしょう。

 

(就業規則の例)
第○条
「正社員は、業務命令により、勤務場所、従事すべき業務を、変更することがある」
第○条
「会社は、契約社員に対し、本人の同意なく、個別契約で特定された勤務場所及び従事すべき業務の変更を命じることはない」

 

 

 

【「その他の事情」があると言うための方法】

 

「その他の事情がある」と言うための方法として考えられるのは次のものです。

 

 

①正社員登用制度を設ける

 

裁判例では、正社員登用制度がある場合、格差が許容される傾向があります。
例えば、

・正社員募集時において、社内でも非正規社員に募集内容を周知
・正社員のポストの社内公募
・評価制度
・正社員へ転換するための試験制度(筆記試験、面接、論文作成等)の構築

 

といった方策を採っておくと良いと思います。

 

 

 

②給与の決定にあたり話し合いを経ておくこと

 

長澤運輸事件の最高裁判決では、定年後再雇用者の賃金が正社員に比べ安いことを正当化する要素として、労働組合との交渉をした上で給与が決定されていた点が強調されています。

 

この点からすれば前述の賃金の変更や就業規則の変更をするに当たっては、正社員、契約社員からそれぞれ従業員代表を選出してもらい、その話し合いのプロセスを経ておくと、格差はOKとなりやすいと言えます。

 

話し合いを行ったということが「その他の事情がある」と言いえるからです。

 

 

 

◎最後に◎

 

現在、新型コロナウイルスの影響もあり、若干人手不足は解消していますが、優秀な人材が不足していることには変わりがありません。

 

優秀な非正規社員に定着してもらう、また、優秀な非正規社員に入社してもらうためには、同一労働同一賃金を達成することは不可欠です。

 

同一労働同一賃金は、人件費アップという消極的な側面だけでなく、優秀な非正規社員の確保定着という積極的な側面もあるので、是非取り組んでいただきたいと思います。

 

ただ、闇雲に取り組むのではなく、生産性の高いやり方で取り組む必要があります。

 

 

当事務所では、


・同一労働同一賃金達成のためのサポート


・その他相談についてのサポート


・問題社員対応


・使用者側での労働紛争その他紛争対応(組合対応を含む)

 

 

などに対応しておりますので、ぜひご相談ください。

 

 

 

 

 


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