営業秘密漏洩の実態

 

営業秘密が漏洩する原因の多くは人です。

 

従業員などの内部者、取引先などの関係者、その他第三者を通じて、営業秘密が流出する事件が多く見受けられます。

 

メールの誤送信など、管理ミスにより生じてしまったものだけではなく、報酬と引き換えに情報を持ち出すような悪質なものもあります。

 

どんな情報がどこに流出してしまうのか、そしてどれだけの損害が生じるのか、など営業秘密の漏洩に関するデータを紹介します。

 

<紹介するデータ>

  • 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室『営業秘密保護のための競業避止義務の締結の方法』より経済産業省「営業秘密の管理実態に関するアンケート調査」(平成24年)
  • 独立行政法人情報処理推進機構「企業における営業秘密管理に関する実態調査」(平成29年)

 

1.営業秘密の漏洩ルート

 

(複数回答)
独立行政法人情報処理推進機構「企業における営業秘密管理に関する実態調査」(平成29年)

 

営業秘密の漏えいが発生した企業に漏えいのルートを聞くと、「現職従業員等によるミス」もしくは「中途退職した正規社員による漏えい」が主なルートとして目立つ傾向が見られます。


金銭目的などの具体的な動機を持った漏洩よりも、ミスによる漏洩が多くを占めており、ちょっとしたミスから大きな問題に発展してしまうという意識を持つことの重要性が計り知れます。

 

 

 

2.営業秘密の侵害を行った者への対応

 

(複数回答)
独立行政法人情報処理推進機構「企業における営業秘密管理に関する実態調査」(平成29年)

 

過去5年間に営業秘密の漏えいを経験した企業において、46.6%の企業でしか事実関係の調査が行われていません。

 

また、懲戒処分といった社内処分による対応は 18.4%の企業で実施されているものの、民事的措置や刑事的措置のような司法の場で争ったケースは数%に留まっています。

 

ほとんどの営業秘密漏えい事案では、司法に頼らず、社内だけで対応していることが分かります。

 

 

 

3.流出した情報の種類

 

(n=195、複数回答)
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室『営業秘密保護のための競業避止義務の締結の方法』p.573
(複数回答)
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室『営業秘密保護のための競業避止義務の締結の方法』p.575

過去5年間で「明らかな漏洩事例」が1回以上あったと回答した企業に対して、漏洩情報の内容等を尋ねた結果です。

 

流出した情報に「顧客情報・個人情報」が含まれていたと回答した企業は82.5%にもなり、非常に多いということが分かります。

 

さらに、これらの漏洩している情報は、企業にとって重要性の高い情報であるケースが相当程度あることも確認されています。

 

 

4.営業秘密の漏洩先

 

独立行政法人情報処理推進機構「企業における営業秘密管理に関する実態調査」(平成29年)

 

過去5年間で「明らかな漏洩事例」が1回以上あったと回答した企業に対して、情報の流出先を尋ねた結果です。

 

国内の競業他社が主な流出先になっていますが、流出先を把握していないケースが22.9%存在しており、決して少なくありません。

 

 

5.営業秘密漏洩の再発防止策として強化・新たに導入したこと

 

(複数回答)
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室『営業秘密保護のための競業避止義務の締結の方法』p.579

 

「特に何もしていない」と答えた企業が14.5%にもなることから分かるように、営業秘密の漏洩が起きてしまった後に、どんな対応をとるべきか分からない、という方も少なくはないと思います。

 

競業避止義務契約、秘密保持契約を締結した企業はどちらも10%に満たず、これらの契約に対する認知度の低さをうかがい知ることができます。

 

 

6.営業秘密の漏洩による損害の規模

 

独立行政法人情報処理推進機構「企業における営業秘密管理に関する実態調査」(平成29年)

 

漏えいを経験した企業が認識している損害の規模については、54.3%の企業が「わからない」と回答しており、当該営業秘密の漏えいが自社に対してどの程度の影響があったかを具体的に把握できていないことが分かります。

損害の規模が1000万円未満であるとする回答が最も多くなっています。

 

営業秘密漏洩対策さえしていれば防げたはずの出費です。

 

この損害額の中には、営業秘密が流出したことにより自社が得るはずだった利益、不正に営業秘密を利用したものの利益だけではなく、営業秘密漏洩の原因調査にかかった費用も含まれます。

 

こういった費用も発生するのだということを認識しておく必要があります。

 

 

7.まとめ

 

上で紹介したように、営業秘密の漏洩による損害は決して小さくはありません。

 

漏洩が起こることによって、信頼を失うことも考えられ、企業にとっては大きなダメージになってしまいます。

 

従業員数が31~100人、101~300人という中小企業でも、営業秘密の漏洩の事例は多く存在します。

 

また、北関東に多い製造業においても、営業秘密の漏洩が起きてしまった事案がみられます。

 

 

 

営業秘密の漏洩は、あらかじめ合意書や就業規則を定めておけば防ぐことができます。

 

当事務所では、営業秘密を守るための合意書作成や、就業規則の作成をお手伝いいたします。

 

営業秘密の漏洩を防止したいとお考えの方は弁護士にご相談ください。

 

 


メールでのご相談予約も受け付け中です。