新型コロナウイルスによる営業不振で解雇ができるか
新型コロナウイルスの影響で全くお客様が来ない、都・県・市から休業を要請されている、発注者が生産停止をした、等の理由で、従業員を解雇しなくてはならないという企業も増えていると思います。
では、お客様が来ない、地方公共団体から休業を要請されている、発注者が生産を停止したという理由で、解雇をすることができるでしょうか。
このような場合の解雇は、「整理解雇」といわれるものです。
解雇にもいろいろ種類があり、懲戒解雇などが有名ですが、整理解雇は懲戒解雇とは違う種類の解雇で、経営不振により解雇をするものです。
日本では、アメリカとは異なり、一度雇用すると容易には解雇はできません。
経営不振というもっともな理由があっても、日本では、容易に解雇は認められません。
1か月分の賃金(いわゆる解雇予告手当)を払えば解雇できるという考えをお持ちの方もいらっしゃるでしょうが、これは誤った考えです。
裁判では、整理解雇は非常に条件が厳しく、よっぽどのことがない限り、解雇はできません。
これは新型コロナウイルス感染症の感染拡大という非常事態であっても、変わりません。
結局は、解雇できる条件を充たしたかどうかがポイントとなります。
整理解雇はほとんどの裁判で無効とされています。
解雇が無効とされると、解雇した日から裁判が終わるまでの間の賃金を会社が支払うことになります。
これはバックペイといいい、何百万円という支払いになる事例も多く、知られざる恐るべき労働裁判の実態でもあります。
仮に、解雇を実施するのであれば、以下のことを実施する必要があります。
① 経費削減(交際費、広告費など)
② 役員報酬の減額、正社員の昇給停止、賞与の抑制
③ 新規採用停止
⓸ 時間外労働の中止
⑤ 配置転換
⑥ 一時休業 所定労働時間の短縮
⓻ 希望退職の募集
⑧ 会社の経理状況の詳細な説明
⑨ 解雇する方の適正な選定(狙い撃ち解雇はできない)
かなり条件が厳しいので、驚かれた方も多いのではないかと思います。
しかし、実際には、これらのことをした上でも解雇をせざるを得ないという状況でないと、現在の判例のもとでは解雇は有効となりません。
これら①から⑨まで全てするのは無理だという企業では、退職勧奨をし、退職届を出すことが良いでしょう。
退職勧奨をし、退職届を出してもらう場合も、会社都合の退社となるため、従業員にとっては失業手当の点では自己都合退職よりも有利です。
ロイヤルリムジングループというタクシー会社で600人の大量解雇というニュースがありました。
これも、実際には解雇ではなく、退職勧奨をして退職届を出してもらっているようです。
~顧問先様へ~
そもそも退職勧奨をどのようにするか、退職勧奨による退職の場合、離職票にどのように記載するかはご相談いただければアドバイスを差し上げます。
- メールマガジンvol.94【大谷選手と松本氏の件から考える危機管理の初動の大切さについて解説】
- メールマガジンvol.93【松本人志氏対週刊文春の訴訟について解説】
- 偽装業務委託契約のリスク-宝塚歌劇団の事例を考える-
- メールマガジンvol.92【偽装業務委託契約のリスクについて解説】
- メールマガジンvol.91【アマゾンジャパンに関するニュース記事の考察】
- 偽装業務委託のリスク
- 名古屋自動車学校事件について
- メールマガジンvol.90【重要最高裁判決の解説―定年後再雇用された方の賃金制度】
- 2023年8月の夏季休業について
- メールマガジンvol.89【有期労働契約に関する労働基準法施行規則等の改正】