新型コロナウイルス感染対策に関するQ&A

 

Q.自宅勤務とした場合に、賃金を低くすることはできるか。

 

東京では、令和2年3月時点で、新型コロナウイルスのパンデミック対策で自宅勤務にしている企業が増えてきています。この動きは地方でも加速するかもしれません。

 

自宅勤務にした場合、仕事で必要な資料が自宅になかったり、機器が不足していたり、他の労働者の目が届かなかったりで、仕事のパフォーマンスが低下する可能性があります。

 

そこで、自宅勤務にした場合、賃金を引き下げることはできるかという問題があります。

 

 

 

原則は、通常の賃金どおり支払わないといけません。

しかし、就業規則で定めれば、賃金を安くすることも可能かと思います。

 

10~20%減が常識的な範囲でしょう。

この場合の就業規則の変更に当たっては、労働者への説明や、就業規則の周知などの手続が必要となってきますので、就業規則の変更に精通した弁護士に助言をもらって行ったほうが無難です。

 

なお、自宅勤務を命じたことで必要になったパソコンなどを購入した場合には、助成金を得られる可能性がございます。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

Q.新型コロナウイルス対策で在宅勤務やリモートワークを命じた場合に、社員が利用したワークスペースの費用は会社が負担するのか、社員個人が負担するのか。

 

「会社に来ないでワークスペースで仕事をしてくれ」と命じた場合には、会社の業務命令によりワークスペースで勤務をしている状態ですから、その費用は会社の負担となります。

 

問題は、社員が自主的にワークスペースを利用した場合の費用を誰が負担するのかです。

 

 

 

例えば、小さい子供がいるため、自宅では仕事に集中できないなどの理由でワークスペースを利用するということはよくあることだと思います。

 

このような場合にまで、会社がその費用を負担する必要は原則としてありません。

もちろん、会社が自主的に負担してあげること自体は問題ないでしょう。

 

 

Q.政府や自治体からの事業の自粛や事業所閉鎖の要請に応じた場合、社員に賃金を払う必要はあるか。

 

自粛要請や事業所閉鎖の要請ということは今後起こりえます。

「自粛」の「要請」なので、会社としては要請に応じないで営業をすることもできます。

実際に、埼玉県では、自粛要請に応じず格闘技の催しが開かれました。

 

 

 

令和2年3月時点、各国でオーバーシュート回避のため、外出禁止命令が出されています。

 

このような事態や、日本で緊急事態宣言が出される可能性なども併せて考えると、「自粛」の「要請」とはいえ、これに従うことは感染抑止という社会的な意義もあり、かつ従業員の生命身体の安全にもつながるものですから、やむを得ない休業であり会社に責任がないと言え、会社が賃金を負担する必要はないと考えます。

 

 

Q.会社や事業体で感染者が出てしまい、行政等から事業所の閉鎖や自粛を求められ、自ら休業した。この場合に、会社は社員に賃金を支払う必要があるか。

 

 

まず、その社員がどのような経緯で新型コロナウイルスに感染したかで問題は変わってくるように思います。

 

例えば、家族に感染した人がいるなど、その社員の感染経路がかなり特定できる場合、会社の業務中に感染したとは言えないと合理的に推定されます。

 

よって、社員の感染について会社には責任がなく、事業所の閉鎖はやむをえない措置ですから、会社が賃金を支払う必要はないと思います。

 

 

 

問題は、感染経路が不明な社員がいた場合です。

業務中の感染が考えられ、会社に責任があるといえる可能性があるからです。

 

このような場合に、賃金を支払う必要があるか否かは、会社が新型コロナウイルスへの感染対策にどれだけ取り組んできたかで変わってくるように思います。

 

会社で新型コロナウイルス対策の指針を設け、それを徹底していた場合(例えば、マスク着用を要請する、手洗いを徹底させる、至近距離での会話をさせない、顧客にもマスク着用を要請する等)には、仮に業務中に感染していたとしても、やむを得ない結果だと言いえます。

 

この場合には、一人の社員の罹患によって事業所を閉鎖したとしても、会社がなすべきことをした上での閉鎖なので、会社は社員に休業中の賃金を支払う必要はないと考えます。

 

 

 

他方、会社が感染対策の措置を何も講じていなかった場合には、業務中に感染したという疑いがあります。

 

このときは、事業所を閉鎖したことについて会社に責任があると判断されうるため、社員に賃金を支払う必要があるということになりかねません。少なくとも、賃金の60%を支払う義務があるという結論になる可能性は高いと思われます。

 

 

 

したがって、皆様の事業所でも、所内向けの感染対策を徹底しておく必要があります。

 

当事務所では、顧客向け、社員向けの新型コロナウイルス感染症対策指針を作成しています(内容は随時アップデートしています)。

 

最新の新型コロナウイルス感染症対策指針のダウンロードはこちら

 

 


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