残業代請求がされたらどうすれば良いか

 

非常に残念なことですが、退職した社員から、残業代の支払いを求める内容証明郵便が届く場合があります。

本人名義で請求されることもありますし、弁護士が代理人になって請求をしてくる場合もあります。

 

いずれにせよ経営者としては、「頑張って経営をして給料を支払ってきたのにこんな仕打ちをするのか」と、とても感情的になってしまいますね。

 

ではこのような内容証明郵便が届いたとき、どのように対応すればよいでしょうか。

 

 

中には「こんなの放っておけ」といって、無視しようとする方もいらっしゃいます。

 

しかし、「無視」は事態を悪化させるだけです。

 

 

どうしてかというと、裁判に繋がってしまう可能性が非常に高いからです。

数百万円など莫大な額の残業代を請求されることが多いですが、裁判を起こすとより多額の残業代を請求することができるのです。

これは「付加金」というもので、倍の額の請求ができることになっています。

 

つまり、裁判外であれば200万円の請求であったのに、裁判となると400万円の請求に増額されるということです。

 

 

さらに、裁判にまで発展してしまうと、時間がかかるという大きなデメリットがあります。

 

残業代請求の裁判は、労働者・使用者共に感情的になり泥沼化するケースが多くあります。

また、実際に働いていた時間は何時間なのか、どのように残業代を計算するのかについて双方で様々な主張がされ、なかなか裁判が終わらないのが現状です。

 

残業代の裁判に関わっていくとなると、会社側の精神的負担もかなり高くなるので、残業代請求の内証証明郵便を無視して裁判に発展することは回避した方が良いと言えるでしょう。

 

 

では、残業代請求の内容証明郵便が届いた場合、どのように対処すれば良いでしょうか。

 

 

時効による請求権消滅の主張をする

 

未払いの給料を請求できる権利、つまり賃金請求権は、2年で消滅時効となります。

つまり、賃金支払い日の翌日から2年が経過すると、従業員は「その給料を支払え」とは言えなくなるのです。

 

しかし、労働基準法の一部改正により、2020年4月からはこの賃金請求権の時効が延長されています。

全ての労働者に対する、2020年4月1日以降の賃金について、賃金請求権の消滅時効期間を原則5年に延長しつつ、当面の間は消滅時効期間を3年とすることになったのです。

 

したがって、いつ支給されたのかによって、以下のような違いが出てくることになるのです。

  • 2020年4月以前の給料:消滅時効期間2年
    支払日が2018年3月20日の給料:2020年4月時点で請求権が消滅
  • 2020年4月以降の給与:消滅時効期間3年
    支払日が2020年6月20日の給料:2023年7月時点で請求権が消滅

 

 

そこで、時効にかかっている給料について請求されたら、請求権が時効により消滅していることを内証証明郵便で主張をします。

 

時効という制度は、単に期間が経過するだけでは権利が消滅することはありません。

実際に時効の主張をしないと相手の権利を消すことはできないので、必ず内容証明郵便で時効の主張をしましょう。

 

 

労働時間のチェック

 

時効にかからない部分が請求されている場合には、次のステップに進むことになります。

 

それは、相手方が主張してきている労働時間が適正であるかのチェックです。

 

 

ここでは、長時間労働や賃金の未払いが問題となることが多い、運送業を例に考えてみましょう。

 

 

労働者が主張している労働時間がデジタルタコグラフに基づいている場合

 

デジタルタコグラフとは、主に大型トラックなどに搭載されている運行記録計のことです。

ドライバーが法定速度や休憩時間を遵守しているかを確認するため、運行の状況を記録することができます。

 

 

このデジタルタコグラフによって、正確な労働時間を算出することができるので、残業代請求を行う労働者側にとっては重要な証拠となります。

そこで、会社側としては、昼休憩以外にも休憩時間とする余地がないかをチェックするようにしましょう。

 

 

労働者が主張している労働時間がタイムカードに基づいている場合

 

この場合でも、労働時間にあたらないと主張できる余地がないか徹底的に検証します。

それらの検証に基づいて、いくら支払うことができるかを社内で検討し、労働者側に支払額を提案していくことになります。

 

 

通常、労働者側はこの提案に基づいて更に対案を出しますので、その対案を会社側で再び検討します。

 

 

 

会社側が1円も支払いたくないとか、会社側が提案した額を労働者側が全く受け入れらないというような場合には、裁判になります。

 

裁判になった場合には、以下のことが争点となります。

  • 労働者が実際に会社にいたのは何時間か
  • その内労働時間と評価すべきなのは何時間か
  • 固定残業代があった場合や手当を残業代とするとしていたような場合、それらは残業代になるのか、など

 

残業代請求の裁判は、第一審だけで1年半~2年もの間裁判を続けることは覚悟していないといけません。

 

 

 

 

以上のように、内容証明郵便の送付、労働時間の検証、労働者との交渉は、手間や精神的なストレスが非常にかかります。

経営者にとって、会社の経営が本来の業務であるところ、こういったことに精神的な負担を強いられ、時間をとられてしまうのはとてももったいないことです。

 

そこで、このような業務は労働事件の処理に精通している弁護士にアウトソーシングすることをお勧めします。

当事務所では、労働者から残業代請求をされた運送会社について、当初約532万円の請求をされたものの、50万円の支払いで示談をしたというようなケースもございました。

 

一概に労働者側の請求を大きく減額できるとは言えませんが、ご依頼者様のためにベストを尽くします。

 

 

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