退職願の提出による合意退職の効力が否定された裁判例

 

 

事案の概要

 

この事件は、社員が会社に退職願いを出し会社が社員にその受理を伝えた後、社員がその退職願を撤回したものの会社はこの撤回に応じず、その後会社が社員を懲戒解雇したというものです。

 

時系列は以下のとおりです。
(時系列)
令和2年1月14日 XがYに令和2年3月31日付で退職するという退職願を提出
    1月22日 YはXに退職願が受理されたことを連絡
    2月27日 XはYに退職願を撤回するという弁明書を提出
    3月22日 YはXを諭旨解雇
    3月27日 Xから退職届の提出がされなかったのでYはXを懲戒解雇

 

 

裁判所の判断

 

この事実関係のもと地方裁判所(第一審)、高等裁判所(第二審)共に懲戒解雇については十分な理由がないとして無効としています。

 

この事件で特徴的なのは、第一審、第二審のいずれも、懲戒解雇だけでなく退職願の提出による合意退職の効力も否定したことです。ただし、合意退職の効力を否定する論理構成は違います。

 

第一審の札幌地方裁判所は、そもそも令和2年1月22日のYによる退職届受理の連絡だけでは合意退職は成立しないので、本件において合意退職は成立していないとしました。

 

 

 

一方、第二審の札幌高等裁判所は1月22日のYによる退職届受理の連絡で合意退職は有効に成立したものの、Xによる2月27日のXによる退職願の撤回と3月27日のYによる懲戒解雇合意退職の効力が両者の合意で撤回されたとした点です。

 


ただ、第一審も第二審も合意退職の効力は否定しました。

 

そして、懲戒解雇が無効という点でも一第一審も第二審も同様なので、結論としてはXの社員としての立場は認められました。

 

 

 

さらにこの事案で特徴的なのは、Xが懲戒解雇後の令和2年4月頃に会社を設立していることからXはYでの就労の意思を喪失していたとされ、いわゆるバックペイの支払いは一審も二審も否定したことです。

 

バックペイの請求は結局認められませんでしたが、Xは未払残業代や付加金、パワーハラスメントによる損害賠償などの請求をしていたところこれらは肯定されており、Yの支払い額は元金533万8744円に加え遅延損害金95万3537円(※)合計629万2281円となりました。

 

※ 第二審の判決日までの遅延損害金

 

 

 

 


メールでのご相談予約も受け付け中です。