無料掲載期間経過後に高額な広告料の請求が来た場合の対処の方法
事案の概要
最近、企業様から、「ウェブ求人広告の無料掲載キャンペーンに申し込みをしたら、有料に切り替わったので広告料を支払ってくださいという請求書が送られてきたがどうしたらいいか。」という相談を良く受けます。
お話を伺ってみると、大抵のケースで求人広告業者から「今なら14日間無料で広告を掲載できます」といった営業があり、無料で掲載してもらえるならばと申し込みをしたところ、無料掲載期間満了後に突然、数十万円もの請求書が送付されてきた、というものでした。
これらの事案では、求人広告業者に申し込みをしたときの書類を見せていただくと、中に契約内容が記載されている書面があり、無料掲載が終わる日の数日前までにFAX、メールによる書面での申し出がない限り自動更新される、という内容が小さな文字で書かれています。
企業様に、無料掲載期間後に自動更新がされることを知っていたかお尋ねすると、皆さん一様にそのような説明は受けていない、と仰います。
本コラムでは、このような無料掲載期間経過後に高額な広告料の請求が来た場合の対処の方法について解説していきます。
広告業者からの請求書を受け取った企業様の中には、「書面に書いてあったのに見落としていた弊社にも落ち度がある」とか、「数百万円というほど高額なものでもないから勉強代だと思うしかないか」などという思いから、支払いせざるを得ないと考える経営者様も多いです。
しかし、近年、こういった広告料の支払いをめぐる裁判で、広告業者の請求を認めない裁判例が出てきています。
裁判例① 東京地裁令和元年9月9日判決
広告業者Xは、3週間の無料掲載期間中にFAXによる解約申入れがない限り自動的に1年間の有料掲載期間に移行し、42万円(税別)の広告料の支払義務が発生する、という契約内容に同意し求人広告を申し込んだ企業Yに対し、無料掲載期間中の解約申入れがなかったことから1年間の広告料42万円及び消費税4万2000円の支払いをもとめる訴えを起こしました。
Xからの訴えに対し、Yは、無料掲載期間が3週間であることの説明は受けてたものの、無料掲載期間中に解約申入れをしなければ自動継続されることの説明は受けていないことを主張しました。
この事案で、裁判所は、Xが、無料掲載期間内に解約しなかった顧客(規約を読んで無料掲載期間内に解約手続きが必要であることを認識したが手続きを失念した者のほか、そもそも規約を読んでおらず解約手続きが必要であることを認識していなかったものも含む)に広告料を支払わせることのみを目的として契約締結をしているものと言わざるを得ず、公序良俗に反する無効な契約であるとして、Xの請求を棄却しています。
裁判例② 那覇簡易裁判所令和3年10月21日判決
広告業者Xは、無料掲載期間終了日の4日以上前に書面での申出がない限りさらに14日契約が自動更新され、14日あたり15万円(税別)の広告料の支払義務が発生する、という契約内容に同意し求人広告を申し込んだ企業Yに対し、無料掲載期間終了日の4日以上前に解約申入れがなかったことから、YがXに対し申し込んだ2件分の広告料30万円及び消費税3万円の支払いをもとめる訴えを起こしました。
Xからの訴えに対し、Yは、Xと契約する意思があったのは無料広告までであり、有料での広告掲載契約をする意思は全くなかったことを主張するとともに、XはYに契約の自動更新について十分に説明せず、あたかも広告費が一切かからないかのようにY代表者を誤解する方向に誘導し契約締結させたとして詐欺による契約の取消を主張しました。
この事案で、裁判所は、Xには、Y代表者の関心が自動更新や有料契約に自動移行することについて意識が向かないように誘導し、Y代表者の錯誤(思い込みや勘違い)によって契約申し込みをさせようとする故意があり、XはY代表者に対して詳細を説明せず沈黙することによってY代表者の錯誤(思い込みや勘違い)を深めて契約申し込みをさせたことが認められるとしました。そのうえで、Yが裁判の中で行った詐欺による契約の取消を認め、Xの請求を棄却しています。
専門家へご相談を
実際、弊所でご相談を受けた案件でも、公序良俗違反の契約である、詐欺の取引であると主張して広告業者に対し無料掲載期間経過後の広告料の支払いはしない旨の内容証明を送付したところ、いずれも広告料請求はなくなりました。
広告の無料掲載期間後に広告業者からの広告料の請求がされたとしても、支払いを免れる可能性は大いにあります。ですので、このような請求をされた企業様は、広告料の支払いをする前に専門家にご相談することをお勧めします。
弊所では、このような無料掲載期間経過後の高額な広告料請求に関するトラブルについて、広くご相談・ご依頼をお受けしております。
無料掲載期間経過後の高額な広告料請求に関するトラブルでお困りの企業様は是非、一度弊所までご連絡ください。