試用期間中の社員の解雇が有効とされた事例-日本コーキ事件-東京地判令和3年10月20日判決

 

 

事案の概要

 社員Xは試用雇用期間中でした。

 

 会社は溶接グループが繁忙となったことから、即戦力となる溶接経験者を雇い入れる目的で、求人票にもその旨を明記したうえで募集を行いました。

 

 Xの履歴書や職務経歴書からは、商品化に耐えられるだけの溶接の技術力を持っていて会社の即戦力として期待できるものと受け取れたため会社はXを採用しましたが、実際には、Xは専門学校を卒業したばかりの者が製作するような製品すら製作することができませんでした。

 

 Xは製品を数百点作成しましたがいずれもそのようなレベルで、商品化に耐えられるようなものではありませんでした。

 

 さらに、Xは課長との面接で溶接のポイントがずれているという指摘を受けましたが、代表者との面接でその指摘の趣旨が理解できないと述べ、その後も溶接不良は改善されませんでした。

 

 このような事情のもとで、裁判所は、Xが会社から新卒者に対して行われるのと同程度の水準の指導が受けられなかったとしても、会社がした解雇は留保解約権行使の合理的な理由や相当性を欠くとはいえないとして、解雇を有効と判断しました。

 

弁護士の視点

 試用雇用期間中であっても解雇の有効性は原則厳しく判断されるのですが、本件は、

 

 ①即戦力となることを期待し、求人票にも明記したうえでの中途採用であったこと、

 ②Xの能力が欠けていることが証拠上明確だったこと、

 ③課長からのポイントのずれの指摘に対し、Xが「理解できない」と回答していたこと、

 

等から解雇の有効性が認められています。

 

 中途採用であれば解雇規制を比較的緩やかに考えうる一つの事例となりますので、会社側としては有難い裁判例です。

 

 


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