居所がわからなくなってしまった人に対して裁判を起こす方法

 

賃借人が家財道具を置いたまま夜逃げしてしまったり、貸したお金を返してもらえないまま借主が行方をくらませてしまったりして、建物の明け渡しや返済を請求したくても、肝心の相手と連絡が取れず居所も分からないため、困ってしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

 

裁判手続を通じて相手に請求をする場合、まず、裁判所に訴状という自身の請求内容を記載した書面を提出します。

 

裁判所は、提出された訴状の内容を確認し、問題なければ裁判所から相手に対し訴状を送ります。裁判所から相手に訴状が届いてはじめて審理が始まるのですが、今回のケースでは相手が行方不明になっていますので、訴状を相手に送ることができません。

 

こういった場合、裁判を起こすことはできないのでしょうか。

 

結論として、居所がわからなくなってしまった人に対して裁判を起こすことは可能です。

 

裁判所は「特別送達」という方法で訴状を送付します。

特別送達では、郵便局員が対面で書類を手渡しし、受取人が署名を行います。本人が不在の場合でも、同居の家族(送り先が会社であれば従業員)が受け取ることができます。ちなみに弊所では、私が不在にしていることが多いため、対応した事務員が署名して受け取っています。

 

特別送達の方法で訴状が送れなかった場合には、休日を狙って送る休日送達や、相手の職場に対して送る就業先送達など、別の方法で送ることを検討します。

 

その中の一つに「公示送達」と呼ばれる手続きがあります。

 

公示送達は、裁判所に訴状を掲示し、2週間が経過すると、訴状が届いたという効力が発生する、という手続きです。

 

公示送達をするには、

・住民票を調べたけれども住民票上の住所にいない

・居所もわからない

・職場もわからない

といった時に使える方法です。

 

ただし、単に「居場所も勤務先も分かりません」というだけでは不十分です。実際に住民票上の住所や相手の居所を訪ねても在宅の様子がない(呼び鈴を鳴らしても応答がない、電気メーターが動いていない、郵便受けにチラシが溜まっている、近所の人に尋ねても引っ越し先が分からないなど)ことを報告し、裁判所が公示送達を相当と認める必要があります。

 

訴状を送っても相手がいない場合、お金も返してもらえず、建物からの立ち退きもしてもらえないのでは、と不安に思われる方も多いでしょう。しかし、金銭の請求に関する裁判で勝訴判決を得ていれば、時効が10年に延張されるため、後に相手が見つかった場合でも、時効により返済を受けられなくなる事態を防ぐことができます。

特に有効なのは建物明け渡しの場合です。

 

 

司法の世界では「自力救済の禁止」という原則があり、たとえ入居者の行方が分からなくなっていたとしても、大家さんが勝手に荷物を運び出したり処分したりすることはできません。

ですが、公示送達の方法で訴状を届いたことにしてもらい、勝訴判決を得た上で、判決に基づいて建物明け渡しの強制執行をすることで、適法に建物内に残された相手の家財道具などを処分することができます。

 

弊所でも、あるアパートの大家さんより、家財や車両を放置したまま賃借人が行方不明になってしまったというご相談・ご依頼をお受けしたことがありました。

ご依頼後、弊所にて賃借人の住民票を取得したところ、住民票の異動は確認されませんでした。

また、賃借人の勤務先の会社が連帯保証人となっていましたが、賃借人はすでに同社を退職しており、新しい勤務先も判明しませんでした。

 

そこで、建物明け渡し請求の訴訟を提起した後、弊所にてアパートの様子を確認し、賃借人が現在アパートに居住していない状況を写真等で記録し、報告書にまとめて裁判所に公示送達の申立を行いました。

裁判所はこの公示送達の申立を認め、無事に送達の効力が発生したことから、裁判およびその後の強制執行手続も滞りなく行うことができました。

 

 

弊所では、このような居所がわからなくなってしまった人に対して請求をしたいといったお困りごとについて、広くご相談・ご依頼をお受けしております。

 

居所がわからなくなってしまった人とのトラブルでお困りの方は是非、一度弊所までご連絡ください。

 


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