問題社員対応6【極意3:退職勧奨】

 

 

 

 

目次

一 退職勧奨とは

二 退職勧奨の準備

三 退職勧奨での注意点

四 退職勧奨のポイントまとめ

五 当事務所で扱った事例と対応

六 まとめ

 

 

 

一 退職勧奨とは

 

 

 

懲戒処分を何度かしても問題行動が改まらない場合、どうしたらよいのでしょうか?

 

▶このような場合には、退職勧奨をすることを検討しましょう。

 

  ★退職勧奨とは、会社から「退職してくれませんか」とお願いするものです

 

労働者が、退職してほしいという会社からのお願いに応じて「退職します」と言えば、退職の合意ができたことになります。
退職勧奨と間違いやすいのが、解雇です。

解雇は労働者を一方的に会社から退場させる手続ですので、退職勧奨とは全く異なります。

 

 

 

 

解雇と退職勧奨の違い▼

 

 

 

退職勧奨を進めていくにあたっては、シナリオ作成が重要です!


次項以下で、退職勧奨をしていく上でのポイントを解説していきます。

 

 

 

二 退職勧奨の準備

 

 

まず、退職勧奨をする前に、その労働者になぜ退職してもらいたいのか、という点を整理します。

退職勧奨をする理由として労働者に説明できるよう、労働者の行為をまとめましょう。

例)退職をする理由

  • 〇月×日に、同僚のAさんに対し「  」と発言して、Aさんや部署からの信用を害する行為をした
  • 〇年~×年にかけて、あなたの統括する部署が赤字である
  • 〇月×日に、取引先のB社のCさんに、「  」と発言して、会社の信用を損ねた

 

 

次に、退職勧奨をする理由とともに、労働者に何かメリットを提示できるか検討します。メリットがあれば、労働者も退職勧奨に応じやすくなるからです。

例)

  • 本来、退職金は出ないが、退職金として〇万円を支払う
  • 退職金を上積みする

なお、メリットを提示する際に、今回の退職勧奨を拒否した場合は、提示したメリットを撤回することを伝えることを忘れないようにしましょう。

 

また、退職勧奨を拒否できることも明確に伝えてください。

 

ただ、中小企業の場合、解決金を支払える余裕がないことも多く、労働者に解決金を支払うといったメリットは提示しないで単に退職勧奨をする、ということが多いと思われます。

 

 

 

これらの準備をした上で、退職勧奨に臨みます。

ここで重要なのは、「未来展望型」で退職勧奨を行うことです。

 

大抵の場合、「あの時お前は〇〇と言った」「みんなお前と仕事したくないと言っている」などと発言し、過去の労働者の行為を責め立て強引に退職勧奨に追い込む、という「過去追求型」で退職勧奨をしがちですが、これは望ましくありません。

 

★「未来展望型」退職勧奨

退職してもらう理由として過去の行為を挙げることは過去追及型と同じです。

 

しかし、過去の行為について触れるときに労働者を責めない点で未来展望型は過去追求型と異なります。

 

退職勧奨では、「現状では当社との間で信頼関係が薄れている。あなたは、他の会社の方が能力を発揮できる。他の会社で能力を発揮してもらった方が、社会にとっても良い」といったポジティブな言い方が望ましく、このような言い方をするのが未来展望型の退職勧奨です。

 

 

三 退職勧奨の注意点

 

 

退職勧奨をする上で特に気を付けるべき点は、強迫にならないようにする、ということです。

 

民法上、強迫や詐欺でされた行為は取り消すことができる、とされています。(民法第96条第1項)

例えば、追突事故を起こしてしまい、相手方に怪我をさせてしまったところ、相手方が車から降りてきて怒鳴りつけ、相手方の車に乗せられた上、「慰謝料100万円を支払います」という一筆を書かされた、ということがあったとします。

 

この一筆は脅されて書かされたもの、すなわち、強迫により書かされたものとして、取消ができます。

 

退職届の提出も、強迫や詐欺での取消の対象となります。

 

では、どのような事例で退職届の取り消しが認められているのでしょうか。

 

退職届の提出も、強迫や詐欺での取消の対象となります

では、どのような事例で退職届の取り消しが認められているのでしょうか。

 

 

裁判では、「退職届を出さなければ懲戒解雇する」と言って退職届を出させたという案件で、退職届の取り消しが認められています。

 

「退職届を出さなければ懲戒解雇する」と言って退職届を出させたというような案件では、そもそも、会社側が懲戒解雇できたのかが問題とされます。

 

会社側が懲戒解雇できなかったのであれば、騙したり脅したりして退職届を出させたと認定され、取消になってしまうのです。

 

         ▼

そもそも、会社側が懲戒解雇できたのかが問題とされます

 

会社側が懲戒解雇できなかったのであれば、騙したり脅したりして退職届を出させたと認定され、取消になってしまいます。

 

退職勧奨をする際、「退職届を出さなければ懲戒解雇もある」などとは絶対に言ってはいけません

 

 

 

退職届の取り消しが認められた事例をご紹介します。

バス会社の女子従業員(バスガイド)が、男子従業員と会社外で情交し懐妊した

これは全く私的な事柄であり、会社の運営とは関係ないため、就業規則上の素行不良などの懲戒解雇事由にはあたらない

それにもかかわらず大声をあげ罵倒して「懲戒解雇するぞ」等と脅して退職届を出させた

石見交通損害賠償事件(松江地判昭和44年11月18日)

 

この事例で、裁判所は女子従業員の退職届の取消を認め、会社は損害賠償として、女子従業員に30万円を支払うことになりました。

 

会社としては退職勧奨をしたつもりが、ほぼ退職強要といったような強いレベルの促しが事実上され、社員が出社できなくなってしまう事例もあります。

退職勧奨による合意退職だったのか、実質的な解雇がされたのかが争点となり、実質的に解雇と認定されることもあります

 

行き場を失くすような態様で退職勧奨がされ、社員が出社できなくなる場合、実質的に解雇されたと裁判所は認定するので注意が必要です。

 

 

 

 

四 退職勧奨のポイント

退職勧奨のポイントは以下のとおりです。

 

1.事実の整理

2.メリットを提示するとうまくいきやすい

3.未来展望型で進める

4.「懲戒解雇する」などの発言は強迫と見なされ裁判で負ける

5.労働者の行き場を失くすような進め方は実質的に解雇と見なされ裁判で負ける

   ▶きちんとしたやり方で退職届をもらう

 

 

 

五 当事務所の解決事例

 

 

前職の経歴が素晴らしく高額の年棒で採用した中途の社員がいた

入社後、仕事を真面目にせず、期待された営業成績もあげられなかった

ご相談に見えた社長は解雇したいとのことだった

 

この件では、解雇もしうるとと考えましたが、解雇裁判のリスクを考えると退職勧奨の方が安全だと判断しました。
そこで、相談に来られた社長さんに退職勧奨する際の言い回しや面談で用いる資料について具体的にアドバイスしました。

当方からのアドバイスの通り社長が退職勧奨したところ、無事退職に至りました。

 

 

 

六 まとめ

 

 

いかがでしたでしょうか。

このように、懲戒処分を重ねても行動が改まらない問題社員に対しては、いきなり解雇するのではなく、退職勧奨を行うようにしましょう。

 

しかし、退職勧奨も一歩間違えれば強迫(/脅迫)となる可能性があります。

 

さらに、労働トラブルは増加傾向にあり、かつ法改正も進んでいます。

問題社員対応を円滑に進めるには、一定の法的知識が必要です。

 

 

◎些細な労働問題でも、前もって弁護士に相談しておくことをおすすめします。

 

当事務所弁護士は労働問題を得意分野とし、問題社員対応を含む数々の労働紛争を解決に導いてきました。

問題社員でお困りの企業様、まずはお電話から、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

 

 


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