社員を出向させることができるのはどんな場合か?-新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件-平成15年4月18日判決
社員を出向させることができるのはどんな場合でしょうか?
この点のリーディングケースとなるのが,少し古いですが,平成15年4月18日の新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件の最高裁判決です。
【事案の概要】
新日本製鐵株式会社で働いているX1とX2が会社から出向命令を受けました。
会社が出向命令を出したのは,下記の理由によります。
昭和60年頃の円高ドル安で製鉄業界は構造的な不況に陥っており,新日本製鐵株式会社もそのあおりを受け経営の合理化を図る必要がありました。新日本製鐵株式会社は経営合理化の一環として,当時していた鉄道業務を協力会社に委託することになりました。
これに伴い,新日本製鐵株式会社はX1とX2をその協力会社に出向させることにしたのです。
141名の出向対象者のほとんどが出向に同意しましたが,X1とX2はこれに反発し,出向に同意しなかったので,会社はやむなく出向命令を出しました。
その後,X1とX2が出向命令は違法だとして提訴しました。
【裁判所の判断】
裁判所がどのように判断したかというと,
①就業規則には出向に関する規定があること,
②労働協約でも出向期間,出向中の社員の地位,賃金,退職金,各種の出向手当,昇給などの待遇に関して詳細な規定があること,
③出向命令について合理的理由があり権利濫用にあたらないこと,
を理由に出向命令が適法だと結論付けています。
①と②で会社には出向命令権限があり,③で権利濫用でもないから出向命令は適法だという流れになります。
図で説明するとこのとおりとなります。
ちなみに,②の詳細な規定は労働協約ではなく就業規則でも問題ありません。
現在の裁判では,出向の適法性が争われる場合,必ずこの枠組みで判断されることになります。
出向命令を検討している企業様は,まずは
①就業規則で出向命令権を定め,
②出向期間などについても詳細な規定を置くこと,
が必要です。
弊所ではこのような規定の整備をお手伝いできますので,社員に対し出向命令を出すことを検討しているという企業様はご連絡いただければと思います。