労働審判で“無断欠席→即決定”? 知らなかったでは済まない送達の話

 

 

ある日突然、裁判所に出廷した覚えもないのに、裁判所から「未払賃金を支払え」という内容の審判書が会社に届く、ということが、実はありえます。

 

審判書を受け取った会社としては、「通知が届いていなかった」、「見ていなかった」と主張したくなるところですが、法律上、そのような主張は原則として通用しません。というのも、裁判所は「付郵便送達」という制度に基づいて、法的には書類が届いたものとして手続きを進めるからです。

 

 

労働審判は、労働者と事業者間の労働関係のトラブルを裁判所を通じて迅速に解決するための手続です。原則として3回以内の期日で審理を終えることとなっており、1回目の期日で結論が出ることも珍しくありません。

 

 

裁判所の実務上、申立人側から提出された書類が相手方に届かないと手続は始まりません。労働審判で言えば「申立書」が相手方に届くことが必要です。

 

裁判所からは、まず「特別送達」という方法で申立書が会社側に送付されます。特別送達では対面で受け取る必要があり、受け取った人が署名をします。受け取られなかった場合には郵便局員が不在票を残して申立書を持ち帰ります。

通常、会社には誰かしらが在社しており受け取りが可能なことが多いですが、たとえば会社が夏季休業中で、郵便局での留置期間内に受け取りに行けなかったというケースもあり得ます。

受け取られなかった申立書は裁判所に戻されます。

 

 

裁判所に戻ってきてしまった申立書は、特別送達以外の方法で再度送達を試みます。

 

その方法の一つに「付郵便送達」という方法があります。

付郵便送達では、裁判所が書留郵便で申立書を送付します。

仮に会社が申立書を受け取らなかったとしても、発送した時点で送達が完了したものとみなされますので、手続を進めることができます。

そのため、付郵便送達の方法で送られてきた申立書を見ていなかった、あるいは放置していた、といったことが仮にあり、会社側が労働審判に出席しなかったとしても労働審判の手続は進んでいくことになるのです。

 

 

会社が労働審判に出席しなかった場合どうなるかというと、最悪の場合、申立人側の言い分が全面的に認められ、申立人が主張する未払賃金額全額を支払えという審判が言い渡される恐れがあります。実に恐ろしいことです。

 

しかも、審判の内容に不服があった場合には異議申立が出来ますが、異議申立の期間は審判書の送達から2週間以内にしなければなりません。異議申立の期間を経過すると、審判は確定してしまいます。つまり、気づいた時にはすでに手遅れだった、というケースも現実に起こりうるのです。

 

ですので、裁判所から郵便物が送られてきた場合には、必ず受け取り内容を確認することが肝要です。

 

 

弁護士に相談を

このように、裁判所から送られてきた労働審判申立書を開封していなかったとしても、法律上は届いたものとみなされますので、郵便物の受領に関して、社内体制を整えましょう。

 

また、労働審判は前述のとおり原則3回以内で審理を終える手続ですので、第1回の期日までに申立人の主張に対する反論をしっかり準備する必要があります。

労使間紛争では多くの法的な争点がありますので、労働審判の期日に備えるには専門家の力が不可欠といえます。

弊所では、会社側からの労使問題全般について、幅広くご相談を承っております。

労働者側から労働審判の申立をされてお困りの企業様は是非一度弊所へご相談ください。

 


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