問題社員対応5【極意2:懲戒処分】
目次 1 懲戒処分の利用状況と現状 2 懲戒処分の段階と軽重 3 注意点と書類サンプル 4 問題社員対応の具体例 |
(1)懲戒処分の利用状況と現状
「第2版 懲戒処分-適切な対応と実務ー」(株式会社労務行政)によると、最近1年間で「戒告、けん責」の処分を行った会社は46社あったのに対し、行っていない会社は138社だったそうです。
懲戒処分を実施した46社の処分件数は306件あり、1社あたり6.6件に上ります。
つまり、全体的にみると懲戒処分を利用している会社は少ないものの、利用している会社は積極的に利用しているという傾向にあると言えます。
ほとんどの会社で、就業規則上、懲戒処分の規定はあると思います。しかし、うまく活用されていないのが現状です。
懲戒処分は、会社の秩序維持のために法律が認める非常に効果的な制度です。
懲戒処分を使っていない会社は、いわば伝家の宝刀を錆びづかせているのと同じです。
また、社員の問題行為が発覚すると、すぐに、懲戒解雇や諭旨解雇をしようとしがちですが、これは運用を誤っていることは、今までのコラム(問題社員対応1【問題社員とは】 問題社員対応2【解雇が難しい社員】)で述べてきたとおりです。
問題社員に対して、文書で業務指導をしてもなお問題行動が改まらない場合、懲戒処分をします。
その際、軽すぎず、重すぎずの処分が必要です。
また、公平性が重要となります。
公平性とは、
- 過去の処分事例と比べて公平か
- 他の従業員と比べて公平か
という2つの視点から考えることになります。
懲戒処分をすることにより、問題社員自身に自分のしたことが違法であることをわからせる効果があるとともに、違法行為があったことを文書で残しておくことができます。
(2)懲戒処分の段階と軽重
懲戒処分にはこのような段階があります。
ここで、懲戒処分というとすぐに解雇を思い浮かべがちですが、諭旨解雇、懲戒解雇は余程のことがない限り選択すべきではありません。
というのも、コラム 問題社員対応1【問題社員とは】でもお話いたしましたとおり、解雇は裁判では無効とされることが多いからです。
ちなみに、諭旨解雇も解雇であることは懲戒解雇と同様で裁判では解雇の有効性が厳格に審査されます。
懲戒処分を行う場合、重度な違法行為でない限り、まずは『けん責』から行うのが無難です。
『けん責』とは、労働者を戒めて始末書を提出させる処分です。
ハラスメントなどの問題行動があった場合、書類(始末書)を残す意味でも、けん責以上の処分が望ましいです。
さらに、懲戒の軽重イメージは以下のとおりです。
重い≒裁判所で無効とされやすい |
解雇を有効と判断してもらうには、懲戒処分を何度も重ねる必要があります。
例)
まずはけん責
⇩
けん責を行っても問題行動が改まらない
⇩
もう一度けん責をする
⇩
それでも問題行動が改まらない
⇩
出勤停止などの重い懲戒処分をする
このように、このように懲戒処分を重ねても労働者の行動が改まらない場合には、解雇が有効となる可能性が出てきますので、懲戒解雇等をすることを検討します。
※懲戒処分をする際の注意⚠
- 公平性を保つ(過去の事例との比較、他の従業員との比較)
- 告知聴聞手続を行い、手続きしたことを書面で残す
- どのような不当行為(事実)があったか、それが就業規則何条に違反するかを懲戒処分通知書に書く
◎告知聴聞のサンプル(当事務所で使用)
◎けん責の懲戒処分通知書
(4)問題社員対応の具体例
当事務所で相談を受けた事例をご紹介いたします。
【事例】 女性社員から上司よりセクハラを受けているという申告がされたため、事実関係を明らかにするため調査を開始した。 証拠メールの収集や他の従業員からの聞き取りを実施した結果、セクハラの事実が認められた。 会社としては、女性従業員の心情に配慮し、上司を解雇したいということであった。 |
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この件では、セクハラの程度は比較的重度でした。
しかし、いきなりの解雇はリスクがある旨を説明し、必要な手続きを経た上で懲戒処分を行いました。
その後、上司のセクハラ行為は収まり、女性社員も上司に一定の処分がされたことで一応の納得をされました。
いかがでしたでしょうか。
問題行動の程度が大きくても、いきなりの解雇は会社側にリスクが伴います。解雇に踏み切る前に懲戒処分を重ね、その対応を書面で残す作業が必要です。
★問題社員対応に安心して臨むには法的知識が必要です★
当事務所弁護士は労働問題解決を得意分野としており、問題社員対応に精通しております。
問題社員対応でお困りの方、労働問題についてあらかじめ準備されたい方は、お気軽にご相談ください。