効果的な退職勧奨の方法と実践
目次 1 退職勧奨の準備 1-1 問題行動の事実特定 1-2 メリットの提示 1-3 未来展望型の退職勧奨 1-4 具体的なシナリオ例 2 社労士先生が立ち会いの際に気を付けること |
今回のコラムでは、退職勧奨を効果的に進める具体的なポイントをご紹介するとともに、社労士先生の目線で注意点を解説します。
1 退職勧奨の準備
1ー1 問題行動の事実特定
退職勧奨をする際、漠然とした理由(成果があがらない、人間関係がうまくいっていない等)で行うのではなく、問題行動の事実を特定して、退職勧奨を行うべきです。
事実の特定がないと、問題社員側から「なぜ退職しなければならないのか」等と思いも書けない反論を受けることがあり、同反論に対して効果的にこちらの言い分を述べられなくなってしまいます。
退職勧奨をする前に、会社の方と綿密にと打ち合わせを行い、問題社員の問題行動を整理し、まとめておきましょう。
例)
・○月×日に、同僚のAさんに対し「 」と発言して、Aさんや部署からの信用を害する行為をした
・○年から×年にかけて、あなたの統括する部署が赤字である
・○月×日に、取引先B社のCさんに「 」と発言して、会社の信用を損ねた
退職勧奨の際は、このような具体的なシナリオ作成が重要です。
1-2 メリットの提示
問題社員に退職勧奨をする理由とともに、何かメリットを提示できると望ましいです。
例)
・本来、退職金は出ないが退職金として○円を支払う
・退職金を上積みする
メリットを提示できると望ましいですが、中小企業の場合、労働者に解決金を支払う等のメリットを提示できず、退職勧奨のみするということが多いように思われます。
そして、メリットを提示せずとも退職勧奨がうまくいくこともそれなりにあります。
メリットを提示できる場合には、退職勧奨を拒否した場合にはメリットを撤回する旨を伝えるようにしましょう。
また、「無理やり退職させられた」等と言われないように、退職勧奨を拒否できることも明確に伝えなければなりません。
1-3 未来展望型の退職勧奨
退職勧奨には大きく2つのパターンがあります。「過去追及型」と「未来展望型」です。
「過去追及型」
・過去の労働者の行為を責め立て強引に退職勧奨に追い込むやり方
・「あの時お前は○○と言った」、「みんなお前と仕事したくないと言っている」等
↓
大抵の退職勧奨はこの過去追及型ですが、このようなやり方は恨みを買う可能性もあり望ましくありません。
「未来展望型」
・問題行動をシナリオに基づき具体的に指摘します。
・その上で、「現状では当社との間で信頼関係が薄れている。あなたは他の会社で能力を発揮してもらった方が社会にとっても良い」と問題社員に伝えます。このような言い方がポジティブで望ましいです。
1-4 具体的なシナリオ例
このように、問題行動の事実を特定し、未来展望型で退職勧奨を進め、可能であれば退職勧奨のメリットを提示する流れが理想です。
2 社労士先生が立ち合いの際に気をつけること
社労士先生の中には退職勧奨に立ち会う先生もいらっしゃいます。
社労士先生が退職勧奨をする場合にはまず、“社会保険労務士という肩書の力を意識する”ことが必要です。(社労士先生が同席すると、労働者としては、圧迫感を受けるのが普通です)
また、社長と一緒に労働者を退職に追い込むような言動は慎むべきです。
後々、先生方が退職強要したなどとして損害賠償請求されたり、懲戒請求されたりする可能性もありえるからです。
◆退職勧奨に立ち会う際の社労士先生の役割
・「あなたも、他の会社での方が能力を発揮できると思う。」と言ってあげること
・退職勧奨を拒否できることを説明すること
・退職勧奨の場を理性的な立場でコントロールすること
→社長が暴走しないように見守る
★問題社員対応に関するお悩みを抱えていらっしゃる企業様、社労士先生におかれましては、ぜひ一度当事務所までご相談ください。