退職届を撤回されないために

 

前回のコラムで、退職勧奨が問題社員対応として有効な手段であることをお伝えしました。

しかし、退職勧奨の使い方を誤ると、退職届が撤回されてしまうという事態が起こりえます。

 

 

本コラムでは、事例を交え、退職届が撤回されないためにはどのようにしたらよいかについて解説していきます。

 

 

 

 

前回のコラムで、退職勧奨が問題社員対応として有効な手段であることをお伝えしました。

しかし、退職勧奨の使い方を誤ると、退職届が撤回されてしまうという事態が起こりえます。

 

 

本コラムでは、事例を交え、退職届が撤回されないためにはどのようにしたらよいかについて解説していきます。

 

 

 

目次

1 事例1

2 退職届の法的性質

3 事例1の問題点

4 退職届を承諾したといえるために

 

 

1 事例1

退職届の撤回に関するある事例を紹介します。

 

バス会社の運転手らが、自身らと反目している社員を排斥するために、

その社員を中傷するなどした嘆願書を社長に提出した

その後、その行為等が問題視され、退職勧奨された

運転手らは懲戒処分もありうると言われ、懲戒処分がされるよりはと退職届を書き、営業所の所長に渡した

バス会社では、退職届を重役の回覧に回し、持ち回り決済がされていた

その後、運転手らは、退職することを翻意し、退職届の撤回を所長に申し入れた

会社は撤回を認めなかったので、運転手らは提訴した

 

この事例のように、せっかく退職勧奨に応じてくれて、退職届を出してもらえたのに、数日後に本人が撤回してきたり、撤回するという内容証明郵便を弁護士が送ってきたりし、退職届が撤回されるという事案があります。

 

そして、恐ろしいことに、退職勧奨の手続を誤ると退職届の撤回が認められてしまうことがあるのです。

 

実際に、上記バス会社の例では裁判所は退職届の撤回を有効としました。

 

 

2 退職届の法的性質

 

では、退職届を撤回されないためにはどうしたらよいのでしょうか。

 

それにはまず、退職届とは何か、ということを知る必要があります。「退職届」という言葉からすると、従業員が一方的に退職するという意思を表明するもののように思えます。

 

ここで、民法には「解約の申入れ」というものがあります。

 

◎民法627条1項◎

『当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。』

 

 

前回のコラムでもお伝えしたとおり、退職勧奨は、従業員が「退職します」と言い、企業が了承すれば、退職の合意が成立したことになります。

 

 

「解約の申入れ」と「退職合意」の何が違うかというと、

 

【解約の申入れ】

労働者から解約の申入れがされ、会社が受領した時点で解約が成立する

退職の撤回はできない

 

 

【合意退職】

労働者から合意退職の申入れがされ、会社が受領し、同申入れを承諾した時点で退職合意が成立する

会社が退職の申入れを承諾するまで、従業員から退職申入れを撤回することが可能

 

 

 

 

裁判の世界では、退職届は、解約の申入れではなく、「合意退職の申込」とされます。  

※ただし労働者が辞めたいという場合は別です。

 

合意退職においては、労働者が「合意退職の申込」をし、使用者が「承諾」すると、承諾の時点で労働契約は終了します。

 

つまり、使用者が「承諾」をするまで、労働者は「合意退職の申込」を撤回することが可能なのです。

 

 

➡ 問題社員から退職届(法律上は「合意退職の申込」)が出されたらすぐに「承諾」の意思を労働者に伝え、かつ承諾した証拠を残すことが重要です。

 

 

 

 

3 事例1の問題点

事例1では、使用者の「承諾」の決定が労働者に伝えられる前に、労働者に「合意退職の申込」を撤回されてしまいました。

 

さらに、重役は退職届の了承を決議したものの、その決議を労働者に伝えていませんでした。

 

つまり、「合意退職の申込」に対し、「承諾」をしていなかったのです。

 

 

この点が致命的となり、裁判所から退職届の撤回を有効であると判断されてしまいました。

 

事例1では、使用者の「承諾」の決定が労働者に伝えられる前に、労働者に「合意退職の申込」を撤回されてしまいました。

 

さらに、重役は退職届の了承を決議したものの、その決議を労働者に伝えていませんでした。

 

つまり、「合意退職の申込」に対し、「承諾」をしていなかったのです。

 

 

この点が致命的となり、裁判所から退職届の撤回を有効であると判断されてしまいました。

 

 

 

4 退職届を承諾したといえるために

では、どのようなときに労働者に「承諾」が伝わったといえると思いますか?

 

社長が退職届を受け取って、「わかった」と言ったら承諾は伝わっていると考えて良いでしょう。

 

問題となるのは、

 ・退職届を受付に置いていった場合

 ・手紙で送られてきた場合

 ・社長以外の人が退職届を受け取った場合   

などです。

 

こういった場合では、会社が「承諾」したか、また、会社が承諾したことが労働者に伝わったかが曖昧になるからです。

 

後で撤回されないように、「承諾」を伝えたという証拠として1番良いのは・・

 

「貴殿から提出された〇月×日付の退職届を弊社は承諾します」

 

という内容証明郵便を労働者に送ることです。

 

 

以下は当事務所で作成した退職届承諾書です。ぜひ参考になさってください。。

 

ただ、内容証明郵便では相手から受け取りを拒否されたり、保管期間経過で配達できずに戻ってくる可能性があります。

 

そこで、内容証明郵便だけではなく、相手の郵便受けに投函されたことが確認できる「レターパックライト」でお送りすることをお勧めしています。

 

 

 

 

 

 

★当事務所弁護士は労働法を得意分野とし、問題社員対応に精通しております。

問題社員対応でお困りの企業様、社労士先生、ぜひお気軽にお電話ください。

 

 

 


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