その他解雇で気をつけること

 

 

目次

1 期間雇用の社員を期間途中で解雇する場合

2 合意退職か解雇か曖昧な事例

3 解雇通知書の作成にあたっての留意点

4 解雇無効の内容証明が来た場合の対処法

 

 

1 期間雇用の社員を期間途中で解雇する場合

 

期間雇用中の社員を期間途中で解雇する場合、懲戒解雇より厳しい判断がされます。

 

厳しい判断がされる傾向の大きさは以下の通りです。

 


懲戒解雇<整理解雇<期間雇用の社員の期間途中の解雇

 

 

懲戒解雇や整理解雇は解雇の有効性を認めてもらうのがとても難しい類型であるところ、期間雇用の社員の期間途中の解雇は、懲戒解雇等より更に厳しい判断がされるのです。

 

 

 

何故、懲戒解雇や整理解雇よりも期間雇用の社員の期間途中の解雇の方が有効性を認められにくいかというと、労働契約法17条1項に「使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」という定めがあることによります。

 

 

 

裁判所は解雇の有効性をなかなか認めてくれない傾向にありますので、例えば、多額の横領をしていたといった重大な違法行為がない限り期間雇用の社員の期間途中での解雇が有効とされることはない、とお考えいただいた方が良いです。

 

 

そのため、期間雇用の期間途中にある問題社員を解雇したいという場合でも、解雇はせず、雇止めをするのが無難でしょう。

 

 

2 合意退職か解雇か曖昧な事例(よくある!)

 

 

次に合意退職か解雇か曖昧な事例についてご説明します。

 

 

例えば、問題社員に「もう来なくてもいい」と言ったとします。

 

 

その問題社員が実際に会社に来なくなってしまったので会社は自己都合退職として扱ったところ、その問題社員が「解雇された」、と主張し裁判になったというような場合、裁判所はどう判断すると思いますか。

 

 

裁判では、会社がその問題社員を「解雇したかどうか」が争点になります。

 

 

上記の例で言えば、社員が来なくなってしまったからといってすぐに退職処理をした場合、残念ながら裁判では解雇した、とみなされてしまいます。

 

 

会社としては、解雇ではなくあくまで合意退職だった、と主張できるよう、社員が来なくなったら

 

 

・出勤命令の内容証明郵便を送る

・合意退職の書面を送る

 

 

等のアクションを取っていく必要があります。

 

 

 

3 解雇通知書の作成にあたっての留意点

 

解雇する際には、解雇処分の通知を出します。その際、できる限り事実関係を詳細に書くようにしましょう。被処分者が弁護士に相談に行ったとしても、弁護士に「これは裁判を起こしても勝てそうにないな・・・」と思わせることを目標にします。

 

 

まれに、労働者側から「解雇理由証明書を出してもらいたい」と言われることがあります。

 

 

これは、解雇通知書の記載が不十分なときなどに求められるもので、解雇通知書で解雇に至る事実を詳細に書いていれば求められることはありません。

 

 

ただし、「解雇理由証明書を出してくれ」と言われたら、対応に気を付ける必要があります。

 

 

というのも、労働者からこのように言われた場合、労働者の裏に弁護士が控えている可能性があるからです。

 

 

もし、労働者側から解雇理由証明書を求められた場合には、安易に証明書を発行するのではなく、何らかの対応を検討した方がよいでしょう。

 

 

 

 

4 解雇無効の内容証明が来た場合の対処法

 

 

労働者側の弁護士から解雇無効の内容証明がきた場合や、ユニオンから解雇無効を求めて団体交渉の申入れがされたとき、解雇が有効となる確信が持てない場合は「解雇の撤回」をしましょう

 

 

解雇の撤回をすると、労働者は会社に出社する義務が発生します。

 

 

他方で、労働者が出社してきた際、会社は出社を受け入れる必要があります。

 

 

会社としては、一旦解雇した労働者を再度受け入れるのはちょっと……と思われるかもしれませんが、解雇の撤回をした後はバックペイが発生しないという大きな利点がありますので、解雇の撤回をした方が良いです。

 

 

そして、解雇の撤回をしても労働者が出社してこなければ、欠勤という正当な理由で普通解雇ができるようになります。

 

 

ここで、解雇の撤回について当事務所で扱った事例をご紹介いたします。

 

 

社労士先生のクライアントが、労働者を社労士先生に相談無く解雇した
この労働者は、会社の備品の無断使用、経歴詐称、業務能力が低い、などの問題点があった
解雇後、労働者から依頼を受けた弁護士から解雇無効を主張する内容証明が送られてきた



 

この会社は労働者に対し業務指導や懲戒処分をせず、いきなり解雇をしたため、裁判で争われた場合、負ける可能性が高い事案でした。

 

 

そこで、当事務所は、まず、以下の内容証明を相手方弁護士に送付しました。

 

 


「解雇は有効と考えていますが、解雇を撤回しますので〇月〇日の月曜日から職場に復帰してください。〇日以降のシフトは〇日にお渡しします。」

 

 

 

その後、労働者側の弁護士から「同〇日は欠勤する」との連絡がありました。

 

 

労働者の欠勤が続けば、有効に解雇することができます。

 

 

また、仮に職場に復帰してきたとしても、問題行動があれば今度は懲戒処分を重ねていき、有効に解雇できるよう手順を踏んでいくことができます。

 

 

 

結果、労働者側の弁護士から「今後は出社する意向はない、解決金を支払ってもらって解決したい」との申し出があり、こちらの言い値の解決金で示談しました。

 

 

 

以下は解雇撤回通知書のフォーマットです。ぜひ、ご参考にしてください。

 

 

 

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