Vol.4【上司はパワーハラスメントなんて気にする必要ない!? その4】
(平成27年7月3日)
【上司はパワーハラスメントなんて気にする必要ない!? その4】
今回のテーマも,前回に更に続き,パワーハラスメントです。
皆様に,次のある裁判での事例でパワーハラスメントが成立するか考えてみてもらいたいと思います。
ある問題社員がいました。
その問題社員は,他の社員が会社のお金を使いこんでいるなどの嘘の噂話をしたり,自身の県外出向に対し役員に直接電話をして不満を述べたりなどの問題行動をしていました。
人事課の社員は,その問題社員を注意しなくてはならないと考え,人事課の会議室に呼び出し注意をしましたが,問題社員はふて腐れ,横を向くなど不遜な態度をとりました。
人事課の社員はその態度に怒り,「自分のやったことに対して,全く反省の色もない。微塵もないじゃないですか。」「とぼんけんなよ,本当に。俺は,絶対許さんぞ。」「会社がやっていることに対して妨害して。辞めてもらう,そのときは。そういう気持ちで,もう不用意な発言は,一切しないでくれ。わかっているのか。わかっているのかって聞いているだろう。」と大声をあげました。
問題社員は,この発言等がパワハラだとし,会社に対して300万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。
さて,どうでしょう。
そもそも問題社員ですし,話し合いでも不遜な態度をとっているので,人事課の社員の発言はセーフと思った方もいるのではないでしょうか。
結論として,広島高等裁判所は人事課の社員の発言について,問題社員に対する慰謝料が発生するとしました。
理由は,上司の発言が,大きな声でされ,かつ,問題社員の人間性を否定するかのような不相当な表現だからということです。
慰謝料額は10万円でした。
慰謝料が認められてしまったという点では,会社は不服でしょうが,300万円を求める裁判で10万円しか認められなかったのですから,実質的には問題社員が負けた裁判だと思います。
皆様に知って頂きたいのは,上記のような発言でも,裁判で慰謝料の対象とされ得るということです。
大きな声を出すことについては気を付けなければならないですね。
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