メールマガジンvol.95【大谷選手と水原氏の件から考える不正領得への対策方法について解説】

前回に続いて大谷翔平選手と水原氏の件についてです。

 

前回のメールマガジンで、大谷選手と水原氏との関係は業務委託契約であり水原氏は「解雇」されたのではなく正確には大谷選手から「解除」されたのだ、と書きました。すると、メールマガジンの読者の方から「水原氏は大谷選手と契約していたのではなくドジャースと契約していたのですよ。」と教えていただきました。ご教示いただきありがとうございます。

 

そうすると、ドジャースが水原氏との契約を破棄したわけですが、日本の法制で考えればドジャースと水原氏との契約が労働契約であれば解雇ですし業務委託契約であれば解除となります。いずれにせよ契約が破棄され契約は終了となっています。

 

ところで、続報で水原氏が大谷選手の口座から違法賭博の胴元側に24.5億円以上もの送金をしていたことが分かりました。大変な額です。

この送金は当然犯罪で現在刑事事件となっており、水原氏が禁固刑を受けるのはほぼ確実です。ちなみに水原氏の弁護人はフリードマンという方でアメリカの刑事弁護では高名な方のようでして、アメリカ版無罪請負人といったところでしょうか(今回は無罪狙いではなくなるべく刑を減軽する弁護をすることになります。)。

では、大谷選手が被った24.5億円以上もの経済的損害はどうなるのでしょうか。いわば民事の問題ですね。

 

経済的責任を追及する対象は四者あり得ます。

 

第1に、当然水原氏です。ただ水原氏はお金をほとんど持っていないでしょうから、回収はほぼ不可能です。

 

第2に、違法賭博の胴元に対してです。胴元は金の出所が大谷選手であること、そして水原氏が違法に横領等していることを知っていたと思われます。このことは、胴元が電話に出ない水原氏に「なぜ電話に出ない。大谷に聞こうか。」等のメッセージを送っていたことからも明らかだと思います。

 

胴元は関係のない大谷選手の金と知りながら水原氏に送金をさせていたので、水原氏と連帯責任を負う立場にあると言え、大谷選手は胴元にも24.5億円の責任追及をできると私は考えます(ただし違法胴元のような反社会的勢力から金銭の回収をするのは容易ではないです。とは言え不可能ではないので大谷選手サイドは胴元に対する責任追及の準備や実行を既にしていると思われます。)。

 

第3に、ドジャースに対する責任追及を考えてみました。仮に水原氏を選任したのがドジャースでかつドジャースと水原氏との間に雇用関係があれば、大谷選手がドジャースに責任追及する余地はあるように感じますが水原氏と大谷選手との関係は報道では12年くらいに渡りドジャースが水原氏を選任したものではありません。とすると大谷選手はドジャースへの責任追及はできないでしょう(まぁ、できてもなかなか自分の球団と法的紛争を起こすのは難しいでしょうが。)。

 

第4に、銀行です。銀行としては大金が一定の期間継続的に流出していたわけですから第三者が大谷選手になりすまして送金していることを気付き得たともいえます。少なくとも銀行に一定の過失があると言えますから大谷選手が銀行に責任追及し得ると考えます。とは言えあまりに銀行の責任を簡単に認めると迅速な銀行決済を害しますから、裁判所が銀行の責任を認めるにせよ限定的ではあると思います。

 

以上から現実的なのは胴元及び銀行への請求ですが、容易ではないですしそれなりに時間もかかるでしょう。

 

では大谷選手としては、どのようにすればよかったでしょうか。

 

そもそも横領等はチェックシステムが不全になっていることに起因します。これは会社の労働関係でも同じことが言えます。

 

自分の片腕や金庫番を信頼してお金の管理を任せ、選手である自分は試合に集中したい、経営者であればお金以外の経営に集中したいというのはよく分かります。ただし人は弱いので、片腕や金庫番からすると金銭を何とかできる(盗む、横領する)状況に置かれてしまうと「ちょっとだけ」、「一時的に借りるだけ」という言い訳をしてそのお金に手を出してしまうということが起きてしまいます。

 

その「ちょっと」が雪だるま式に膨れ上がり取り返しのつかない状況になってしまったというご相談を今まで相当数受けてきました。

 

もちろん盗った人が悪いことは言うまでもありません。とは言え、盗ることができる状況を作ってしまったという意味で選手サイド、経営者サイドにも責任の一端がないわけではないです。

 

ですから、横領等が起きないよう選手や経営者としては金銭や会社の経理に常に一定の注意を払い、注意を払っていることを片腕や金庫番に継続的に知らしめる必要があります。

 

それと共に、通常の会社での横領対策としては社員に身元保証人を付けてもらうというのが古典的ですがやはり効果があります(24.5億円以上もの横領等となると身元保証人としても何ともできず話が違ってきてしまいますが。)。

 

横領等をしたら後で身元保証人である家族に迷惑がかかると思えば横領等を抑止する一因となりますし、仮に横領等が起きてしまって本人に返す資力がなくても家を持っている親を身元保証人として付けておけば損害金の回収をし得ます。

 

この点、身元保証については法律が変わって、極度額といいまして賠償額の限度を決めることが必要となっています。

 

また期間は最大で5年となっていて5年経過したものは効力がありません。この場合、新たに身元保証書を取付ける必要があります。

 

横領等への抑止としては常に会社の金銭関係に目を光らせるのと共に身元保証人を付けるというのが企業としてやるべきことと言えます。

 

なお、会社の身元保証書の効力などを相談したいと言う顧問先様は、書面をチェックして万全な形にアップデートさせていただきますのでご相談いただければと思います。


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