Vol.17【中小企業のための契約の知識について その2】

(平成29年4月17日)

 

【中小企業のための契約の知識について その2】

 

前回のメルマガで日常生活の至るところで契約はされており,契約は契約書がなくても成立するということを書きました。

 

皆さんが対会社や対個人との間でされている売り買い,仕事の発受注などは全て契約です。

 

契約書の取り交わしをしていなくても,契約は成立するのです。

 

契約書というのは契約の必須の条件ではありません。

 

しかし,対会社との取引などで取引先が契約書の締結を求めてくる場合があります。

 

 

ではなぜ,取引先は,あえて契約書を作ろうとするのでしょうか。

 

私が顧問先企業から契約書のチェックを頼まれて,チェックをすると,当たり前のことですが,取引先が作った契約書は大抵その取引先に有利に作ってあります。

 

 

東京の築地市場の移転問題を例に挙げます。

 

東京都と東京ガスの豊洲の土地の売買契約書には土地に瑕疵(土壌汚染などの問題等)があっても,東京ガスはその責任を免除されるという規定が設けられていました。

 

本来は,民法という法律の規定により,土地に直ぐには発見できないような土壌汚染があった場合,東京都は売買契約を解除できたはずでした。

 

しかし,瑕疵の責任の免除規定があるため,東京都は土地の売買契約を解除できません。このまま東京都が豊洲の土地を有効活用できないままですと,東京都としては大損をしてしまうことになります。

 

東京都は税金で運用されているため,倒産などの問題にはならず,せいぜい責任者が責任を負うということで済みますが,仮に築地の売買契約が民間企業の問題だとしたら,プロジェクトの大きさからして倒産問題になりうる事柄です。

 

逆に,東京ガスは,汚染のある土地を売り抜けたということで,大きな得をしたと言い得ます。

 

東京ガスが,土地に土壌汚染があることを知りつつ土地を売ったとまでは思えませんが,東京ガスは,後で売買契約を解除されるリスクに備えて,瑕疵の責任を免除する規定をあえて契約書に入れたのだと思います。

 

東京都と東京ガスの豊洲の土地売買契約の問題は契約書を結ぶ意味を考えるための良い素材となります。本来であれば,東京都は民法の規定で欠陥のある土地ということで契約を解除できたはずなのに,それが契約書の規定によってできませんでした。

 

 

契約書は,法律の本来の原則を修正して,一方を有利に扱うことが出来るのです。

 

中小企業様でも,取引先の会社が,契約書を送ってきたら要注意です。

 

その契約書は必ず取引先に有利に作られてあります。場合によっては,常軌を逸するような規定が入っているかもしれません。

 

このような場合に備えて,取引先から契約書が送られてきた場合には,専門家に必ずそれをチェックしてもらうことをお勧めします。

 

 


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