Vol.27【中小企業のための解雇の知識について その7】
(平成30年4月27日)
【中小企業のための解雇の知識について その7】
前回までのメールマガジンでは,解雇をするためには,懲戒処分を積み重ねることが必要と述べました。
解雇は,学校の退学処分と同じように共同体から強制的に退出させるもので,インパクトが大きいことから、いきなりはできず,何度か懲戒処分をすることが前提として必要ということでした。
今回は,解雇の知識の最後に,懲戒処分と退職との関係についてお話しします。
警察を含む公務員が,飲酒運転など不祥事を起こした場合,減給の処分を受けた等と,新聞に掲載されることがあります。
この減給の処分は懲戒処分の一つです。
このような記事を読むときに,私が気をつけていることがあります。
それは,職員側から,依願退職の申し出があったかどうかです。
注意深く記事を読んでみると,「なお,この職員は,○月×日付で依願退職をした。」などと書かれていることがよくあります。
この場合,解雇はしていませんが,従業員が会社や役所からいなくなるという結果の面では解雇と同じです。
退職に至ったプロセスは以下の3つが考えられます。
①不祥事を起こしたということで従業員が居たたまれなくなり自ら辞めると言ってくる。
②懲戒処分を受けたことの心理的ショックで退職する。
③懲戒処分をするときに,会社側が従業員に退職して欲しい旨を申し入れて,従業員から退職の申し出がされる。
②と③の場合,懲戒処分が,退職のきっかけとなっています。
今までお話ししたように,不祥事があったとしても,いきなりの解雇はできませんが,懲戒処分をすることによって,従業員が自ら退職するという結論になることは案外多いです。
懲戒処分は,そもそもは,不祥事に対してけじめをつけさせるのと共に今後の不祥事の発生を抑止するためのものです。
懲戒処分は,それだけにとどまらず,処分を積み重ねることによって後々の解雇のための前提作りになりますし,懲戒処分それ自体で従業員がショックを受けるなどして退職するという結論に持っていくこともできるので,その威力は大きいです。
懲戒処分は積極的に活用すべきものなのです。
次回からは,この懲戒処分の内容や方法について,お話ししていきたいと思います。
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