Vol.39【中小企業のため固定残業代の知識について その5】
(令和元年5月29日)
【中小企業のため固定残業代の知識について その5
前回までのメルマガで,業務手当5万円を支払い,この5万円をもって,残業代を支払ったと取り扱うための方法(いわゆる固定残業代制)について話してきました。
前回までのメールマガジンでお伝えしたのは,固定残業代制は適法に運用しようとすると経済的メリットはなさそうだ,ということでした。
どういうことかと言うと,仮に,固定残業代を5万円という取り扱いをし,毎月5万円を業務手当などの名目で支払っていたとします。
6月の残業代を実際に計算してみたところ,残業代は3万円でした。
固定残業代制を採用している場合,実際の残業代が3万円でも5万円を払うことになるので,残業代2万円は過払いということになります。
7月の残業代を計算したところ,7月は残業が多く10万円だったとします。
この場合は,固定残業代5万円に,追加で5万円を支払わないといけません。
ところで,これらの場合,6月は2万円過払いだから,7月に5万円追加が必要だとしても,5万円ー2万円=3万円なので,7月は3万円を支払えばよいという考え方は通用するでしょうか?
裁判でこの点を明確にしているものはないと思いますが,裁判で争いになった場合,7月は2万円を引き,3万円を支払えばよいという結論にはならないと考えます。
裁判所の考えによると、固定残業代制というのは、残業代の最低保証のようなものです。
最低この額の残業は一定額として支払い,残業代を計算して最低保証額を上回った場合には,上回った分についても支払うというものです。
裁判になった場合でも勝てるように固定残業代制を運用しようとすると,固定残業代制を導入しても,毎月残業代を計算しなくてはならないので,残業が少ない時は過払いになり,残業が多いときは,追加を支払うので結局,経済的メリットはないのです。
ですが,前回のメルマガでもお話しましたが,固定残業代制は求人広告では,大きな効果を発揮します。
求人広告に,
「基本給16万円」,と書くより
「月額21万円(5万円は業務手当,業務手当は定額の時間外手当としてお支払いします」,と書いた方が,条件が良さそうに見えます。
単純に月に貰える額が大きいというだけでなく,残業代もちゃんと支払ってもらえるのだと安心感を与えることが出来ます。このような求人面でのメリットは,人手不足の現代では大きいと思います。
法律事務所でも,固定残業代制を採用して求人広告を出している事務所もあります。
必然的に5万円以上程度の残業代が発生するような職場では,固定残業代制は,人手不足の現状を考えると,人の採用という観点から,導入又は存続するメリットは大きいように感じます。
「固定残業代制を適法に導入したい,または,既に導入しているが適法に運用したい」という企業様は,ご相談いただければ,アドバイスさせて頂きますので,ご連絡いただければと存じます。
【編集後記】
GWの10連休,はるか昔のことのようにも感じられます。
当事務所では10連休中3日間営業をしておりました。
皆様はいかがお過ごしだったでしょうか。
私は,10連休中の半分以上,家族が実家に帰っていたので,仕事をしながらでしたが,久々に自由を満喫できました。
とは言え,何をしたというわけではなく,普段より仕事のペースを落とし,小説を読んだりDVDを見たりしていただけですが。
館林市の名所は何と言ってもつつじが岡公園です(「出没!アド街ック天国」で館林市が取り上げられた時にも当然第1位でした)。
昔は,GWにつつじが満開となっていたようです。最近は温暖化の影響か花がGWより早く咲いてしまい,GWに観光に来られる方が花が枯れているといってがっかりされるという話も聞いていました。
今年は,桜の咲きが長かったのと同様,つつじの咲きも長く,GWもつつじの花が残っていました。
お世話になっている測量士の先生から,「今年のつつじは綺麗だよ」と聞いていたので,朝7時前に入園料が無料になるのを利用して,GW中,2回,つつじを見てきました。
2日間とも,前日の夜に雨が降ったことから,雨に濡れたつつじを見られ,とても綺麗でした。
去年から今年にかけて,吉川英治さんの「新・平家物語」を読みました。
作中,新田義貞の妻として,絶世の美女である勾当内侍(「こうとうのないし」と読みます)が登場し,新田義貞は彼女のために,現太田市尾島町につつじを植えたとの伝承があります。伝承が本当であれば植えられたのは,1336年頃となります。
ちなみに,新田義貞と勾当内侍との関係が記された史料「太平記」には,九州へ落ち延びた足利尊氏を追撃せよという朝廷の命令に対し,勾当内侍との別れを惜しんだ新田義貞が出兵に遅れ勝機を逃したとの話が描かれています(吉川さんは作中,出兵が遅れたのは義貞の体調不良が原因であり,別れを惜しみ出兵が遅れたという説は否定されています)。
勾当内侍のために植えられたという,そのつつじは,太田市尾島町から,館林藩第3代藩主 榊原忠次(徳川四天王 榊原康政の孫)により,1627年に,つつじが岡公園に移植され,「勾当内侍遺愛のつつじ」として,現在でも公園内にあり,つつじの季節には,見事な花を咲かせているんですよ。
今年のつつじの写真はこちら
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