メールマガジンvol. 76【残業代請求の大波】
去年の4月に民法の改正がされました。
その改正の中で時効の改正もあり、残業代請求権に関する時効は紆余曲折がありましたが、現状、3年となっています。
因みに、今までは残業代請求権の時効は2年でした。
時効期間が延びたことの影響が出てくるのは、来年の4月です。
まだ影響が出ていないため、時効の延長については騒がれていないですが、この改正は企業へ大きな影響を及ぼすものです。
会社経営者の方はあまりご存じでないと思いますが、実は労働事件の裁判はここ30年で4倍以上に増えており、今後ますます増えていくと予想されます。
いつ何時、自社が元従業員や現従業員から訴えられるかわからない時代になっています。
そして、残業代請求の時効が2年から3年になったことにより、請求できる額が1.5倍に増えました。
例えば、改正前は200万円請求できたとしたら、改正後は300万円請求できることになりました。
このことから、残業代請求権は弁護士業界の一大マーケットになる可能性が高く、今後、過払い金のように広告などがされて、中小企業が残業代請求権で狙い撃ちされる事件が増えるでしょう。
これに備えるには、定額残業代制度を導入することが有効です。
定額残業代制度とは、例えば月5万円など一定の残業代を定額で支払うものです。月額25万円の給与を支払っている場合、基本給を20万円、定額残業代を5万円とするのです。
ところで、多くの会社で、定額残業代制度を導入する場合、労働条件の不利益変更になります。
それにも関わらず、就業規則を変えるだけとか労働条件通知書を変えるだけで定額残業代制度を導入する件が相当数見られます。
しかし、単に就業規則を変えるとか労働条件通知書を変えるというだけでは適法に定額残業代制度を導入することはできません。
どのようにすれば定額残業代制度を適法に導入できるのかは次回のメールマガジンでご紹介します。
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