メールマガジンvol. 79【民法改正における残業代請求への影響】
一昨年の4月から民法が改正され、現状、従業員の会社に対する債権の時効は3年となっています。
そして、この時効の影響が出始めるのが今年の4月からとなります。
これはどういうことかというと、一昨年の4月に支払うべきであった残業代があったとして、この残業代の権利は民法改正前であれば2年経過時点、すなわち今年の4月に時効で消滅していました。
しかし、民法改正により2年経過時点である今年の4月では消滅しなくなりました。
一昨年の4月に支払うべきであった残業代は、来年の4月になってようやく時効にかかります。
この関係で、今年の4月から残業代請求できる額が上がります。
今まで200万円の残業代を支払うべきであったケースでは、時効3年時代になると300万円の残業代を支払う必要があるということになります。
この影響を特に受けると言われているのが、運送運輸業です。
運送運輸業は、人手不足や長距離運送で、長時間労働が常態化しており、100時間残業しているなどはざらで、真面目に残業代を計算すると月額20万円くらいになってしまいます。
月20万円ですと年額240万円です。時効2年時代の際は、残業代は2年分で480万円でした。
しかし、時効3年時代になり、3年分で720万円の請求となります。
さらに残業代請求で怖いところは、残業代請求の裁判では、今まで残業代を支払ってこなかったことへのペナルティとして2倍の請求ができることです。これを付加金といいます。
720万円の請求が付加金を含めると1440万円の請求となります。
しかも残業代請求は元従業員2人が同時に請求してきたり、1人が終わったと思ったら他の従業員が請求してきたりと請求が連鎖することもあります。
高額な請求を何人もがしてくるという事態までいってしまうと、なかなか会社運営をするのは難しいと言えます。
これらを防ぐための抜本的解決方法は、賃金制度を変更することです。
具体的には、歩合給(出来高払制)を多くする賃金体系です。
どうしてかというと、歩合給では残業代の計算方法が法律上、圧倒的に会社に有利となっているからです。
歩合給の残業代計算方法は、時給単価は総労働時間で割り、乗じる率は0.25となっています。これらがどれだけ会社側に有利かは、具体例も挙げて、次回のメールマガジンでお伝えします。
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