メールマガジンvol. 80【残業代抑制のために歩合給を採り入れよう!】
前回のメールマガジンでは、残業代を抑制する方法として、歩合給がお勧めだという話をしました。
歩合給は、法律上は出来高払制と言います。
なぜ歩合給がお勧めかというと、法律上の歩合給の残業代計算方法は、時給単価は総労働時間で割り、乗じる率は0.25となっているからです。これらがどれだけ会社側に有利か、具体例をみてみましょう。
給料が30万円、所定労働時間が170時間、残業が80時間の会社があったとします。
この会社では、給与には歩合給部分はなく、基本給、家族手当、住宅手当等で賃金が構成されていますが、分かり易くするために単純に基本給30万円として考えてみます。
この場合、残業代の時給単価は、30万円÷170時間≒1764円となります。結構高いですよね。
残業代がいくらとなるかというと、1764円×1.25(割増率)×80時間=17万6400円となります。
月17万6400円の残業代ですから結構な額ですが、このような会社は実際のところ運送運輸業などを中心によくあります。
では、30万円の内25万円が歩合給だとします。残り5万円はここでは基本給と考えてみましょう。
歩合給と歩合給以外では残業代の計算方法が違うので、歩合給と歩合給以外で別々に残業代を計算します。
まず、歩合給部分の残業代を見てみましょう。
歩合給部分の時給単価は、25万円÷250時間 で計算します。結果、時給単価は1000円となります。
250時間というのは、所定労働時間170時間に残業時間80時間を足したものです。
時給単価を出す際、普通は賃金を所定労働時間170時間で割るのですが、歩合給の場合は所定労働時間に残業時間も足して時給単価を出すことができます。
これにより時給単価が低くなるのが、歩合給の第1の特典です。
実際、歩合給は月額25万円なのに時給は1000円ですから時給単価が大分安いです。
そして、歩合給部分の残業代は、1000円×0.25(割増率)×80時間で計算され、結果2万円となります。
割増率が1.25ではなく0.25であることが歩合給の第2の特典です。
割増率が0.25だと残業代がかなり安くなりますよね。
さらに、基本給5万円部分にも残業代が発生します。
これを計算すると、5万円÷170時間×1.25×80時間≒2万9411円となります。
30万円の内25万円が歩合給の場合、歩合給25万円部分の残業代が2万円、基本給5万円部分の残業代が2万9411円で合計4万9411円となります。
歩合給は基本給の5倍であるのに、残業代は基本給の方が9411円高くなっており、このことからも歩合給の残業代計算方法がどれだけ会社にとって有利かが分かると思います。
歩合給の導入は残業代を抑制するための方法としてとても有効です。
ところで、先程、30万円の内25万円を歩合給にするという給与体系を挙げましたが、よくこの給与体系は最低賃金に反しないのかというご質問を受けます。
結果としては、反しません。その理由は次回のメールマガジンでお話します。
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