メールマガジンvol. 81【完全歩合給では最低賃金に反するか…?】
前回のメールマガジンで賃金に歩合給を用いた場合の特典についてお話しました。
特典というのは、残業代計算の際に、企業側にメリットがあるということです。
歩合給の第1の特典は、残業代計算の際に時給単価が低くなることです。
歩合給以外の賃金は、賃金を所定労働時間(所定労働時間とは、ここでは残業以外の労働時間のこととご理解ください)で割って時給単価を出します。
例えば、月給30万円、所定労働時間が160時間、残業時間が60時間の場合で、月給が基本給や残業代がつく手当で構成されていれば、時給単価は30万円÷160時間となり、1875円です。結構高いですよね。
ところが30万円が完全歩合であれば、時給単価を出す時に所定労働時間に残業時間も足して計算ができます。
先程の例で月給が全て歩合給であれば、30万円÷(160+60(時間))=時給単価は1363円となります。歩合給の場合、時給単価がかなり安くなります。
歩合給の第2の特典は、残業代計算の際に掛ける率が1.25でなく0.25となることです。
先程の月給30万円、所定労働時間が160時間、残業が60時間の例であれば、30万円が基本給や残業代が付く手当で構成されていれば、算出された時給1875円に1.25と60(時間)を掛けます。
結果、1875円×1.25×60時間=残業代は14万0625円となります。
ところが30万円が完全歩合であれば、先程出した歩合給の単価1363円に60時間と0.25を掛けます。
すると、1363円×60時間×0.25=残業代は2万0445円となります。
歩合給を採り入れると、このように、残業代を圧倒的に削減できます。
ところで、30万円を完全歩合給で支払うとすると、いわゆる基本給部分がないので「最低賃金に反しませんか」とご質問をいただくことがよくあります。
結果としては、30万円の完全歩合給で基本給部分がゼロでも最低賃金には反しません。ここは誤解が多いところなので注意してください。
先ほど、 30万円の完全歩合、所定労働時間が160時間、残業時間が60時間の給料であれば、残業代の計算のための時給単価が1363円になると述べました。
歩合給が最低賃金をクリアしているかは、この1363円と最低賃金を比較して判断することになっており、1363円は当然最低賃金を上回っていますから、給与30万円を全て歩合給で支払っても、法律上問題ないということになります。
また、そもそも基本給のない給与体系などブラックで許されないと感じる方がいるようですが、基本給がゼロというのも法律上は特に問題ありません。
歩合給には残業代を削減する大きなメリットがあります。
運送業では歩合給を採り入れている会社が多いのですが、運送業以外でも少しずつ採用している企業が増えてきています。
歩合給を採用できる職種は案外たくさんあります。
次回のメールマガジンではどのような業種で歩合給を採用できるかを検討してみたいと思います。
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