メールマガジンvol.85【完全歩合給制度等への変更方法】
運送業やタクシー業で歩合給振り分け方式(従業員への支払総額を歩合で出し、それを基本給や残業代や各種手当に振り分けるという方式)を採っている場合、残業代を支払っていることにはならないので、これらの場合、完全歩合給制度等に賃金体系を変更していく必要があります。
運送業では給料が売上×35パーセントとなっていたり、タクシー業でも給料が売上×51パーセントとなっていたりすることが多いです。
歩合給振り分け方式ではこれらの計算方法で算出された額を基本給や残業代に振り分けるわけですが、振り分けられた給与の中身は実際のところ完全歩合給ですので、上記のような会社は思い切って賃金規定を完全歩合給に変えた方が良いと思います。
問題はどのような方法で賃金規定を変えるかですが、一般的なやり方としては就業規則を変えた上で従業員の皆さんから同意書を取得します。
ただ、最近は同意書を取得しても裁判などで同意書の有効性が争われることがよくあり、同意書が労働者の本当の意思を表していないとして同意書が無効とされる事例が散見されます(裁判で同意書の有効性が争われていくことになります)。
そこで私がお勧めしているのは、従業員の皆さんから同意書を貰う際に説明書を配布することです。
例えば、
「弊社では○○の理由で完全歩合給を採用することになりました。
今までの給料も、売上に35パーセントを乗じて出していたものなので、実質は完全歩合給でしたが、弊社賃金規定では完全歩合給とはされていなかったので、この度、賃金規定を完全歩合給に改めることになりました。」
といったような説明書を配布します。
このような説明書を配布した上で同意書を取得すれば、同意書は労働者の本当の意思を表しているとして、有効とされる可能性がかなり高くなるのでお勧めです。
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