懲戒解雇と普通解雇の使い分け
目次 1 解雇の種類・難易度・有効確率 2 懲戒解雇を選択する意味についての考察 2-1 解雇予告手当の支払いを免れる 2-2 退職金の支払いを免れる 2-3 賞罰について |
1 解雇の種類・難易度・有効確率
解雇には3種類ある
①普通解雇
労働契約で、労務の提供がいい加減だったり、労働力の提供がなかったりする場合に、契約を解除すること
②懲戒解雇
企業秩序違反として、懲戒権の行使として行われる
③整理解雇
会社の業績が悪く人員整理としてされる解雇
法文上の規定はない(普通解雇の1つ)
解雇の難易度
企業で色々問題を起こす問題社員に対して行うのは、普通解雇か懲戒解雇です。
問題行動があった場合に、どちらの解雇を用いるかは戦略的に考える必要があります。
普通解雇と懲戒解雇の有効確率
○普通解雇(H19~R2)
有効25件、無効19件 <有効確率57%>
○懲戒解雇(H25~R2)
有効6件、無効17件 <有効確率26%>
普通解雇の有効確率と懲戒解雇のそれを比較すると、普通解雇の方が有効になりやすいことがわかります。
2 懲戒解雇をする意味についての考察
懲戒解雇は裁判所で無効になりやすいとすれば、普通解雇ではなく懲戒解雇を選択する意味はあるでしょうか?
懲戒解雇を選択する理由は一般的に、2点あります。
①解雇予告手当の支払いを免れることができる
②退職金の支払いを免れることができる
これら2点を免れるには本当に懲戒解雇しかないのでしょうか・・・。
普通解雇を再考してみましょう。
2-1 解雇予告手当の支払いを免れる
労働基準法20条1項 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りではない。 |
『労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇』=懲戒解雇ではありません!
普通解雇であっても、『労働者の責に帰すべき事由に基づいて』の解雇で解雇予告除外認定を得れば、予告手当を支払わなくて良いと定められています。
つまり、普通解雇でも予告手当の支払いを免れることができます。
2-2 退職金の支払いを免れることができる
多くの就業規則では、以下のような規定があります。
『懲戒解雇の場合、又は懲戒解雇事由がある場合、退職金の一部または全部を支給しない』
この規定によると、懲戒解雇でなくても、懲戒解雇に相当する事由があれば、退職金の不支給を主張することができます。
普通解雇した後、「解雇は普通解雇だが懲戒解雇に相当する事由があるから退職金は支払わない」と主張しても問題はありません。
つまり・・・
普通解雇でも ・予告手当を支払わない即時解雇 ・退職金の不支給 を主張することができる |
となれば、懲戒解雇を選ぶメリットはあまりないと言えるでしょう。
2-3 賞罰について
「懲戒解雇されたら履歴書の賞罰に書く必要がある」という話をよく聞きますが・・・
履歴書の「賞罰」の「罰」とは刑事罰であり、懲戒解雇は含まない
従って、懲戒解雇にしたからといって、次の就職が難しくなるということも特にないと考えられます。
問題社員を解雇する際、懲戒解雇か普通解雇にするかは慎重になる必要があります。
この点、お困りのことがございましたら、当事務所までご相談ください。