メールマガジンvol.96【カスタマーハラスメントの防止対策】

最近、カスタマーハラスメント(カスハラ)についての新聞記事などをよく見かけます。

厚労省の調査結果では、従業員が30人以上いる企業の約28%が従業員からカスハラの被害申告を受けたとのことです。

 

ご存じのとおり東京都では官民を問わないカスハラ防止条例を制定する動きがあります。

損害保険会社の三井住友海上火災保険株式会社では、カスハラ対策のため、従業員の通話をAIに記録させた上で通話内容によりAIが「カスハラあり」と判断した場合、管理者にメールで伝え従業員へ迅速なサポートをする取り組みを始めるようです。

従業員がカスハラ事案を抱えて誰にも相談できずメンタル疾患などになる前にシステムでカスハラ認定させるというのは素晴らしい取り組みです。

 

パワハラという言葉はかなり浸透し、企業でも就業規則にパワハラ禁止の条文を定めることが多くなりました。さらに、2020年6月のパワハラ防止法の施行で企業にパワハラ防止義務が課され、パワハラ研修も行われるようになりました。

パワハラ研修を行っているとパワハラに対する管理者の意識は大分変わってきたと感じます。

 

これに対し、カスハラについては特に法的な規制はありませんし、企業がカスハラ対策に取り組んでいるかというとまだまだかと思います。

 

では、企業がカスハラの防止対策を怠っていたとして、この場合企業に何らかのペナルティはあるのでしょうか。

例えば、接客をしている従業員Aが顧客Bから怒鳴られるなどのカスハラを受けそれを企業に申告したとします。

企業としてはその申告をあまり重視せず引き続き従業員Aに顧客Bの担当をさせる等して従業員Aがうつ病になり、従業員Aが長期間休職したとします。つまり企業がカスハラ対策を怠ったことにより従業員Aはうつ病になってしまいました。

この場合、従業員Aのうつ病は労災になり得ます。

また、企業が従業員Aから後々慰謝料などの損害賠償請求を受けたらこれに応じる義務もあります。

このような結果となるのは、企業には従業員に対する安全配慮義務があってカスハラ防止も安全配慮義務の一環となっていると考えられるからです。

 

現時点で企業にカスハラ防止義務を明確に課す法律はありませんが、労働契約法5条では、企業は従業員に対する身体安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするとされています。

企業のカスハラ防止義務もこの条文から読み取ることが可能です。

 

現在、どこの企業でも人手不足で悩んでいます。

カスハラの防止に真摯に取り組まない企業は従業員からは見放され離職が相次ぐなどして人手不足が加速化するおそれもあります。

従業員から損害賠償されるうんぬんよりむしろ、離職問題の方がカスハラ放置の負の側面として大きいと思います。

 

このようなことからすればカスハラについて現状法律がないからといって、カスハラを安直に考えることはできません。

 

企業がカスハラ防止で最低限やる必要があることは、

①カスハラ窓口の整備、

②従業員、顧客へのカスハラ防止宣言、

③カスハラ防止研修、

などです。

 

これらに取り組む等してカスハラ撲滅を目指していただければと思います。
弊所でもこのような取り組みのお手伝いをさせていただけますので、必要な方はお気軽にご相談ください。


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