メールマガジンVol.67【同一労働同一賃金の最近の動向 その5】
【同一労働同一賃金の最近の動向 その5】
同一労働同一賃金という言葉は若干意味が分かりにくいと思います。
この言葉は、正規職員と非正規職員が同様の責任で同種の仕事をしているような場合、待遇(賞与や手当等)で不合理な格差を設けてはならないという意味です。
例えば、ある運送会社の皆勤手当を例として考えてみます。
この会社の皆勤手当に関する規定では、ある月に欠勤なく出勤した場合、1万円の支給を受けられるとされていました。
そして、正規職員であるトラックドライバーは、令和3年2月に皆勤だったため、1万円の皆勤手当の支給を受けたとします。
これに対し、同社には非正規職員であるドライバーもいましたが、このドライバーも2月は皆勤だったにもかかわらず、非正規職員に皆勤手当を支払うという規定がないため、1万円の皆勤手当の支給を受けられませんでした。
本来、非正規職員は、皆勤手当は支給されないということを受け入れた上で会社に雇用されているわけですから、会社は皆勤手当を支払う必要はないはずです。このような考えを契約自由の原則とか私的自治と言います。
しかし、非正規職員の立場に立って考えると、同じ仕事をしていて、かつ自身は当月欠勤なく勤め、皆勤手当の要件を充たしているのに、皆勤手当の支給を受けられないのは、差別されていると言えます。
また、一億総活躍社会の理念に照らしても、全国何百万件とあるこのような事態を放置するのは不合理ですし、非正規職員を低賃金に留めるのは国の活力を失わせる可能性もあります。
このため、契約の自由が修正されることになり、結果として会社は待遇の差を是正しなければならなくなりました。
従って、中小企業においても、本年4月1日から(厳密に言うと、既に同一労働同一賃金を実現していないといけないのですが)、上記の例で言えば皆勤手当を非正規職員のドライバーにも支払わなくてはならない、ということになるのです。
そうすると、次に問題となるのが、いくら支払う必要があるのかです。
理想は正規職員と非正規職員が同じ責任で同じ仕事をしているならば、非正規職員にも同じく1万円を支払うことです。
ただ、いきなり全非正規職員に1万円を支払うというのが難しい会社もあるでしょう。
ここからは私見ですが、このような場合、最初は月額500円を支払い、少しずつ上げていくという対応でもやむを得ないと思います。
例えば、1年目は500円、2年目は1,000円などと少しずつ上げていくのです。そして、資金繰りに余裕ができた時に、今度は大きく上げるなどして、非正規職員の待遇の改善を図るというのが現実的な方法だと思います。
このさじ加減は会社によって千差万別だと思いますので、詳しくお聞きになりたい方はご相談いただければと思います。
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