メールマガジンvol.86【競業を食い止める具体的な方法とは…?】
ここ最近人手不足が続いており、どこの企業も採用難で苦しんでいます。
この人手不足の中で、社員の離職は会社にとって大きなダメージとなります。
さらに、その社員が顧客リストや会社の製造ノウハウを持ち出して競業するという事例も見られます。
このような事例では、社員が辞めることとお客さんを奪われることとのダブルパンチとなります。
さらに悪質な事例では、社員が辞めてお客さんやノウハウを奪うだけでなく、他の社員も勧誘して連鎖的に複数の社員が辞めて競業会社に入社するというものがあります。
他の社員も連鎖的に退職ということになると、会社は、①社員の退職、②顧客を奪取される、③他の社員を他社へ勧誘され複数退職になる、というトリプルパンチで損害を受けます。
会社としてはこうした事態を防ぐ必要がありますが、どのようにすればよいでしょうか。
①から③の内、①社員の離職は防ぐことができません。社員には退職の自由があるからです。
他方、②顧客を奪取されることと③他の社員への離職の勧誘は、やり方次第で食い止めることができます。
以下、②顧客の奪取と③他の社員の勧誘の防止で分けて考えてみたいと思います。
まず顧客の奪取については、相当数の会社で入社時等に誓約書を提出させていて、その誓約書には「企業情報の不正利用をしません」等の一文があります。
この一文で、社員が辞めた後、会社の顧客に接触することを防ぐことができるかと言いますと、残念ながら、社員が今までいた会社の顧客に接触すること自体は企業情報の不正利用にあたりません。
従って、「企業情報の不正利用をしません」という誓約書があるだけでは社員が退職後に会社の顧客に接触することを防止できません。
退職する社員が会社の顧客と接触することを防止したいのであれば、在職中に競業避止の合意書等を結ぶ必要があります。
合意書の内容は会社と競業する会社に就職等しませんという内容となります。
このような合意書を結ぶ際のポイントは、競業を禁止する期間、場所、職種を限定し、競業禁止に対しては何らかの代償を支払うことです。
次回のメールマガジンでは、どのような合意書にすれば実効性を持たせられるかを掘り下げてお伝えします。
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