メールマガジンvol.99 【セクハラ事案で「同意の抗弁」は通用するか?】

ジャングルポケットの斉藤氏が捜査を受け窮地に追い込まれています。

斉藤氏は、今年7月、東京・新宿区の路上に駐車していたテレビ番組の撮影に使うロケバス内で共演していた20代半ばの女性タレントに性的暴行を加えるなどした疑いが持たれています。

週刊文春によると、二人きりのバスの中でのわいせつ行為は別々に3回に渡って行われたようです。

 

女性の方は、斉藤氏に別れ際に「またよろしくお願いしますね。」と言ったりロケが終わってから「おつかれさまでした。」とのショートメールを送ったりしていました。

 

ところが、女性側はどのタイミングか不明ですが警察に相談したようで、警察が捜査し、斉藤氏は書類送検となりました。女性側は「絶対許さない。」と述べ、示談の条件として斉藤氏の芸能界引退を求めています。この辺りの示談交渉は弁護士が関与しているでしょうね。

 

 

斉藤氏からすると、別れ際にも挨拶されているしショートメールも貰っているし、大体バスの中でも嫌がるそぶりはなかったということで、警察から呼ばれたのは青天の霹靂だったのでしょう。

本件は今後どうなっていくのでしょうか。

 

 

バス内にはドライブレコーダーがあり、車内の様子が録画されていました。ドライブレコーダーがある中でわいせつ行為に及ぶのもどうかと思いますが、さすがに斉藤氏はドライブレコーダーが車内を録画していることを行為時には知らなかったのでしょう。

 

私は録画の映像上、女性が嫌がる様子はなかったのではないかと推測しています。女性は、内心は嫌だったでしょうが、色々な思いの中嫌々ではあったものの外見上は斉藤氏を受け入れたのではないかと思います。

そうすると、不同意性交罪での起訴は容易ではないです。

 

おそらく今後示談等がされ(示談金は500万円から2000万円の間あたりでしょう。)、不同意性交罪は不起訴になると思います。

仮に示談ができなくても捜査機関としては不同意とまでは立証できないということで、不起訴になると考えています。

 

 

示談ができず民事事件になったら損害賠償請求は認められるでしょう。刑事事件では不処分でも民事事件では違法ということはそれなりにあります。

民事事件の損害賠償額は100万円から150万円くらいかと思います。民事事件の損害賠償額より示談金の方が大分高くなります。

示談には起訴を取り下げてもらうという特典があるので、示談金は民事事件の損害賠償額と比べて高くなるのです。

 

 

弊所ではセクハラの相談を受けることがそれなりにあります。

その中でわいせつ行為に及んでいるセクハラもあって、加害者側はよく「同意があった。」、「恋愛だった。」と主張をします。これは「同意の抗弁」とか「恋愛の抗弁」などと言われます。

 

「同意の抗弁」等を主張しても、

①優越的な上下関係がある、

②年齢差が大きい、

③仕事に関係する密室でのわいせつ行為、

 

の場合、少なくとも民事事件の損害賠償の局面にて同意があったと認められることはかなり少ないです。

①から③が揃っている場合、被害者側が外見上嫌なそぶりを見せていなくても内心は嫌だろうと一般的に考えられるからです。

 

 

部下の異性から感じよく接してもらうと「自分に気がある。」と勘違いしてわいせつ行為に及んでしまう例が少なくありません。

 

今回の斉藤氏もそうですが、いったん重度セクハラ行為に及びそれが外部機関に申告された場合、加害行為者が被る信用リスクの棄損は大変なものとなります。

 

加害行為者が優秀な社員でもそういった加害行為が行われたとなると会社としては処分せざるを得ませんし、加害行為者としても恥ずかしくて社内にいられないということで退職に至ってしまいます。

加害行為者が優秀な社員の場合、その社員が退職に至ると会社としては損失です。

被害に遭われた社員が大変苦しい思いをするのは言わずもがなです。被害社員も離職になり得ますし、場合によっては会社は被害社員から訴えられます。

 

こういった事態にならないよう、異性の部下から良い顔をされても勘違いしないよう社員等を啓蒙する必要があり、この啓蒙の観点からはハラスメント研修はとても効果的だと思っています。

 

弊所では今年顧問先様で5回、非顧問先様で3回、社労士会支部でも1回、ハラスメントに関するセミナーを行いました。

弁護士に研修を依頼されたいという場合には弊所で実施させていただけますので、お気軽にご連絡いただければと思います。


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