Vol.11【中小企業のための時効の知識 その1】
(平成28年4月13日)
【中小企業のための時効の知識 その1】
「時効」というと,皆様は何を思い浮かべますか?
私は,法律の勉強をする前は,時効と言えば,もっぱら刑事事件でのイメージでした。
犯罪を犯しても,一定期間を経過すると,罰することができないというものです。
ドラマなどで,時効寸前に,刑事と犯人がせめぎ合いをして,最終的には逮捕されるなどのシーンを度々見て,このような印象を持ったのだと思います。
時効は,刑事事件,民事事件の両方であります。
先ほどの話は刑事事件の時効ですが,弁護士になってからは,刑事事件の時効が問題となるようなケースにはほとんどぶつかっていません(時効になる事件は,被疑者いわば犯人が訴えられることはないので,弁護士は余程のことがない限り,刑事事件の時効には関係しないのです。)。
私が関与した事件で,時効が問題となったほとんどのものは,民事事件です。
特に,①中小企業の売掛金の時効,②交通事故の損害賠償請求権の時効,の二つが問題となります。
どちらも,消滅時効と言われるもので,①中小企業の売掛金は支払時期から5年(例外があります),②交通事故の賠償請求権は事故から3年で消滅します。
法律家ではない方で,誤解が多いのは,時効を止める方法です。
例えば,5年の時効であっても,請求書を送り続けていれば,時効を止められると思っている方をよくお見受けしますが,請求書を送るだけでは時効は止められません。請求書を送っていても5年経ってしまえばアウトです。
確実に時効を止めるためには,①債権を認めるという書面を貰う,②裁判を起こす,などのことが必要です。
やりやすいのは①です。
例えば,銀行は時効間際になると,融資先を訪問して,「承諾書」への署名を求めます。この行為の意味は,①の債権を認めるという書面を貰って,時効を止めることにあります。
そうだとすると,「自社の持っている債権が時効にならないように承諾書を貰いたいが,どのような書式にすれば良いか。」,という質問が生まれると思います。
次回のメールマガジンでは,どのような書面を貰い,時効を止めるかをお話しします。
- メールマガジンvol.90【重要最高裁判決の解説―定年後再雇用された方の賃金制度】
- メールマガジンvol.89【有期労働契約に関する労働基準法施行規則等の改正】
- メールマガジンvol.88【運送業者の残業代請求の裁判例について】
- メールマガジンvol.87【競業禁止期間と競業禁止場所の制限】
- メールマガジンvol.86【競業を食い止める具体的な方法とは…?】
- メールマガジンvol.85【完全歩合給制度等への変更方法】
- メールマガジンvol.84【歩合給振り分け方式の残業代について解説】
- メールマガジンvol.83【歩合を残業代に割り振る給料体系の適法性】
- メールマガジンvol. 82【どのような業種で歩合給を取り入れられるか?】
- メールマガジンvol. 81【完全歩合給では最低賃金に反するか…?】