Vol.10【中小企業のための債権回収の秘訣 その5(最終回)】
(平成28年3月1日)
【中小企業のための債権回収の秘訣 その5(最終回)】
前回までのメルマガで,未払いとなっている債権の回収について,「分割払いにしてもらいたい」と言われたら,保証人を付けることを条件として出すことについてお伝えしました。
債務者から,保証人が見つかったと言われたときは,和解書を作る訳ですが,和解書には必ず連帯保証人自身に署名して貰うこと,実印を押して貰うこと,連帯保証人の携帯電話番号を聞き直接電話をして保証の意思を確認する,ということが必要でした。
このようなことをしないと,後で,「保証のことは知らない。」などと言われかねないからです。
今回のメルマガは,保証人を付けて貰った上での分割弁済の和解をする際,どうすればいいかということについてです。
まず,当然ですが,和解書を作ります。
和解書では,現在の未回収債権合計がいくらか,分割金が月額いくらか,いつ払うか(例:月末までに)等を記載します。
ここで,とても重要なのは,分割金の支払いについて遅れがあったとき,どうするかです。
例えば,100万円の売掛金を10万円の10回払いで約束したとします。ここで,3回目の支払いが遅れて,その後も支払いが滞ってしまったとします。
この際,「支払いが遅れた場合,分割金は一括で支払わなければならない」という条項を入れておかないと,大変なことになります。
もし,この条項がないと,3回目で遅れたとしても,その時点では10万円(3回目分)しか請求できません。10か月後でないと,80万円(3回目から10回目まで)全額を請求できないことになってしまいます。
このような事態を回避するため,「支払いが一度でも遅れたら,債務者は当然に期限の利益を失う」という条項を入れないといけません。
期限の利益を失うというのは,分割払いではなく一括で支払わないといけなくなる,ということです。
この条項があって初めて,3回目の支払いが遅れた場合,残額80万円をすぐに請求できることになります。
これは,分割払いの和解をするとき,とても重要なことなので,是非覚えておいて下さい。
連帯保証人を含めた和解書のフォーマットはインターネットで検索すれば,ある程度使えるものが見つかると思います。
心配な方はご連絡いただければ,和解書をご作成いたします。
もちろん,債権回収全体のご依頼も可能ですので,ご自身で交渉するのに自信がない場合は,どうぞお気軽にご相談下さい。
今回で,債権回収の連載は終了です。
次回からは,誤解の多いトピックスである「時効」について書きたいと思います。
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