Vol.13【中小企業のための時効の知識 その3】
(平成28年7月29日)
【中小企業のための時効の知識 その3】
今回は,3年の時効であるのに(例えば,建築業者の請負代金債権の時効は3年です。),3年が経過してしまった時にどうするかをお話しします。
時効というのは,期間を過ぎてしまうと,それで効力が生じると思っている方も多いと思います。
例えば,支払日から3年の時効であれば,支払日から3年間過ぎてしまうと,債権者の権利がポッと消えてしまうように思っているかもしれません。
しかし,最高裁判所の裁判例では,時効は,債務者が「援用」という行為をするまでは効力は生じないと考えられています。
上の例であれば,3年を経過していても,権利は消えていません。支払いをする側が「援用」(「私は時効の利益を受けます」と債権者に伝えることで,内容証明郵便などでします。)という行動に出ないと,3年を過ぎても権利は存在しています。
そのため,3年を経過してしまったなど権利が時効期間を経過してしまってもいても,債務者による援用がされない限り,権利は存在しているので,回収はできます。
ただ,この場合,援用をされてしまったらもう回収はできなくなってしまいます。
そこで,まずは,援用をできないようにしなくてはいけません。
どのようにしてやるかというと,債務者に,債務を認めるという紙に,サインをしてもらうだけです。
このサインを貰った場合,債務者は時効の主張ができなくなり,また時効はサインの日から振出に戻ります。3年の時効であれば,サインの日から3年の時効となります。
したがって,時効期間を経過してしまっても,慌てず,まずは債務者に権利を認めてもらうよう努力します。この際,もちろん,権利が時効にかかっていることを告知する必要はありません(告知したら,サインしてくれませんよね。)。
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