Vol.58【新型コロナウイルス感染症に関する法律問題 その10】

 

【新型コロナウイルス感染症に関する法律問題 その10】

 

新型コロナウイルスの問題で資金繰りが苦しく、固定費を下げたいという話を聞きます。

固定費として大きいのは、人件費です。

 

会社の資金繰りが苦しい時に、労働者の賃金を下げることは可能でしょうか。

 

労働者が同意すれば可能ですが、労働者にとって賃金引き下げにメリットがありませんので、通常、本心から賃金引き下げに同意することはないでしょう。

そのため、このような同意をとっても裁判などでは無効と判断される可能性が高いです。

 

労働者の人件費を下げられるのは、以下の場合です。

  1. 役職手当を受け取っている労働者に問題行動があったので役を解いたところ、役職手当が支払われなくなった結果、賃金が下がる場合
  2. 公務員のような等級制度の賃金体系を取っていて、何らかの問題行動があったので資格等級を下げた結果、賃金が下がる場合

いずれも労働者の問題行動があったことが必要ですし、2の場合には、問題行動があれば等級を下げられることを賃金規定で定めておくことが必要です。

 

その他、現在の情勢で考えられる賃金の削減方法は、労働時間の短縮に伴い賃金を下げることです。

経営者側からすると、労働時間が削減されているから当然に有効だと思うかもしれません。

 

しかし、それほど簡単な話ではありません。
労働者側からみると、給料の減額という不利益が生じることになるからです。

そのため、賃金を下げないと会社の手形が不渡りになってしまうというような非常事態以外では、賃金引き下げについて労働者の書面上の同意が必要かと思います。

 

同意を貰う際にも、具体的な数字を示して労働時間の削減と賃金引き下げの必要性をしっかり説明することが必要です。

 

また、資金繰りの目途が立ったら、労働時間と賃金を前の状態に戻すことも必要だと考えます。

なお、賞与については、中小企業の場合、会社側がある程度自由に増減額できますので(賃金規定上会社に裁量を認めるものが多いことによります。)、この点は基本給と違ってきます。

 

人件費の削減を実行するなら賞与から、ということになります。

 


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