Vol.59【新型コロナウイルス感染症に関する法律問題 その11】
【新型コロナウイルス感染症に関する法律問題 その11】
6月19日付の上毛新聞に、「過労死問題を扱っている群馬県内の弁護士等が、新型コロナウイルスに感染した従業員の労災申請についての無料相談に乗る」という内容の記事が掲載されていました。
従業員が業務中に新型コロナウイルスに感染した場合、労災に該当してしまうことがあります。
厚生労働省の見解によると、以下のような感染のケースが労災にあたり得るとされています。
- 医療従事者が感染した場合、原則として、労災に該当する
- a) 複数(2人以上)の感染者が確認された労働環境下での業務
b) 顧客等との近接や接触の期間が多い労働環境下での業務
→個別に労災になるかを判断する - 上記以外でも感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合、個別に労災になるかを判断する
6月30日時点で、433件の申請があるそうで、労災または公務災害と認定されている事例も出てきています。
労災になった場合、労働者に支給される給付金だけで労働者への賠償は済むと思っている会社経営者の方がいらっしゃいます。
しかし、これは全くの誤りで、実際のところ、労働者が国から支給される労災給付金は、本来会社が労働者に支払うべき損害賠償金の一部にすぎず、労働者に訴えられれば、会社は労災給付金以上の損害賠償額を支払う必要があります。
特に、後遺症を発症した場合や死亡した場合は、損害賠償額がかなり高額になることがあり、企業が労働者に対し1億円以上の損害賠償金を支払うことになったケースもあります。
新型コロナウイルスでは、不幸にも感染者が亡くなってしまうケースがあり、これが業務中の感染として労災認定された場合、会社は相当な損害賠償金を支払わなくてはなりません。
そのような事態にならないよう、会社としては、従業員が業務中に新型コロナウイルスに感染しないように最大限努力する必要があります。
具体的には、新型コロナウイルス対策指針を作成し、マスクの着用を義務付けたり(マスク着用による熱中症に注意する必要もあります)、消毒を徹底したりするなどです。
これはいわゆる安全配慮義務の一環とも言えます。
東京では感染リスクが高まってきており、地方に波及してくる可能性もあるので、このような指針作成や安全な職場環境の整備をぜひ心がけてください。
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