退職届の撤回 ー退職勧奨1ー
問題社員対応6【極意3:退職勧奨】では、退職勧奨についてアウトラインをご紹介しました。
本コラムから、退職勧奨についてより詳細をご紹介します。
目次 1 労働紛争化しやすい問題社員の2類型 2 問題社員対応の実務 3 退職勧奨とは? |
1 労働紛争化しやすい問題社員の2類型
問題社員には、大きく2つのタイプがあります。
1つめは、「非協調型」であり、業務命令を聞かない、自己中心的な言動に終始する、営業に出ているがきちんと仕事をしているのか不明等のタイプの社員です。
2つめは、「能力不足型」であり、仕事のパフォーマンスが異様に低いとか、営業に出ているが仕事をしているのか不明といったタイプの社員です。
仕事ができない、また業務命令に従ってもらえない社員がいると、経営者の方々は頭を抱え、本来の業務である経営に集中できません。
また、問題社員に対しては、経営者だけではなく他の従業員も悩んでいます。
というのも、リクナビが転職経験者100人に調査した退職理由の本音ランキングによると、
1位に「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(23%)
3位に「同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」(13%)
という理由が挙げられており、3割以上が人間関係の不満により退職を決意したことが窺えます。
人間関係が退職理由になるとすると、業務命令を聞かない、ハラスメントをする、事故死中心的な言動に終始するといった問題社員がいると、他の社員の退職理由になり得ます。
従って、問題社員対応は、会社からの人材流出や人手不足を食い止めるために極めて重要となります。
では、どのように問題社員に対応していけばよいでしょうか。
問題社員に辞めてもらえると話は早いですが、単純に解雇して問題ないでしょうか。
実は、問題社員であっても、能力不足や協調性の欠如という理由では、原則として解雇は難しく、裁判で解雇の有効性が争われた場合、解雇は無効と判断されることが多いです。
解雇無効の裁判で負けた場合、従業員は復職することになります。また、仮に和解が成立したとしても、和解金として1年分や2年分の賃金を支払うことになることが多く、企業側の負担は甚大です。
そのため、なるべく解雇は避けるべきと言えます。
2 問題社員対応の実務
問題社員へ対応していくには、以下の方法があります。
〇業務指導処分
業務指導処分は、会社からの指示を適正に行うよう書面により指導をするというもので、懲戒処分よりも軽い手続きです。
問題社員対応は、まずは業務指導処分から始めるとよいでしょう。
〇懲戒処分
懲戒処分とは、会社が、従業員が就業規則違反や企業秩序違反行為をした際、就業規則に基づき制裁を科す処分のことです。
戒告、けん責、減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇といった種類があります。
懲戒処分は問題社員対応としてはとても有効な手続であり、懲戒処分を重ねれば解雇が有効になることもあります。
〇退職勧奨
退職勧奨とは、従業員に対し「退職してくれませんか」とお願いするものです。
退職勧奨は、懲戒処分をせずいきなり行っても構いません。
また、退職勧奨に成功すれば当該従業員に退職してもらえるので、問題社員対応としては迅速で効果的な手続です。
ここから、退職勧奨について詳しく解説していきます。
3 退職勧奨とは?
前項でも申したとおり、退職勧奨とは、会社から従業員に対し「退職してくれませんか」とお願いするものです。
会社から従業員に退職を促し、従業員が「退職します」と言い、企業が了承すれば、退職の合意が成立したということになります。
他方、解雇は、会社から従業員に対し「会社を辞めさせます」と一方的に言い渡すものです。
退職勧奨と解雇の違いは、退職合意があるかどうか、という点にあります。
また、退職勧奨をした場合、「退職します」と言った、言わない問題を回避するため、従業員から必ず退職届をもらうか退職合意書に署名押印してもらうようにしてください。
以下は、退職合意書のフォーマットです。参考になさってください。
なお、退職勧奨による退職は、離職票上は会社都合による退職となります。
問題社員対応で即効性のある退職勧奨ですが、使い方を間違えて解雇と見なされたり、退職届が取消になったり撤回になったりなどのトラブルが散見されます。
次回以降のコラムでは、退職勧奨で見られるいくつかの典型的なトラブルについて検討していきます。
当事務所弁護士は労働法を得意分野とし、問題社員対応に精通しております。
問題社員対応でお困りの企業様、社労士先生、ぜひお気軽にお電話ください。